最弱職のはずが最強でした 〜追放されたビーストテイマー、伝説の魔獣たちと世界を旅する〜

ゆずの しずく

第1話

「これでお前は、パーティから正式に追放だ」


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かがポキリと折れた。


「……わかったよ」


静かに答えたのは、ノア=アルディス。

帝国騎士団直属のSランクパーティ《暁の牙》に所属していたが、“ビーストテイマー”という職業ゆえ、常に雑用扱いされてきた。


「テイマーなんて、ただの足手まといだ。魔物が言うことを聞く保証もねえしな」

「もっと強い魔法職に入ってもらったほうが、パーティ全体の戦力になるってわけ」


──ああ、なるほど。

最初から俺なんて、必要なかったんだな。


でも。ノアには、誰にも知られていない“秘密”があった。


彼は契約の瞬間、“魔獣の心の声”が聞こえるという、極めて希少な才能を持っていた。


それでも、戦場では“自己判断で魔獣を呼ばない”ことを命じられ、力を封じられ続けていた。


──だが、もう縛られる必要はない。


「いい機会だ。俺は俺の力を、俺の意志で使わせてもらう」


そうして一人放り出されたノアは、森をさまよい、偶然にも“神話級”と呼ばれる存在――幻獣フェンリルと出会う。


巨大な銀狼が睨みつける。


『人の子よ、なぜ我を恐れぬ?』


「……お前の孤独が、少しだけわかる気がしたから」


沈黙のあと、フェンリルはククッと笑った。


『面白い。ならば、我が力を預けてやろう。名を呼べ、主よ』


契約成立。


その瞬間、ノアの体に力が満ち、空気が震える。


――神話級魔獣白銀の王・フェンリル、従属完了。


最弱と嘲られた職業は、今、世界最強の戦力へと変貌する。

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