朝、暴食にて

白川津 中々

◾️

起床、空腹。

抗えぬ衝動に身悶えし冷蔵庫を漁るも食料なし。しかし鳴き止まぬ腹の虫は爆食にてあやすしかない。震える手と指で衣服を纏い、外出。初夏の風生温く不快な気温。これはビールだ。ビールで爽快になろうと決意。向かうは牛丼屋。24時間営業の安心感。出勤中のサラリーマンや掃除中の主婦に不審がられながらも小走り御免。5分の距離が誠に遠く険しく、コンビニでいいのではという妥協に屈せず前へ進み、ようやく、ようやく到着。食券制、牛丼並、卵、チーズトッピング。立て続けに牛皿、炙りカルビ、お新香、キムチ、温泉卵、豚汁をチョイスし最後にビール。4名掛けテーブル着席。「ビール、キムチ、温玉、お新香のお客様」の掛け声に小躍りしながら受け取り。キムチをつつき、温泉卵をすすり、グラスを満たして腹に入れる。美味い。美味いが足りない。そうとも、俺は暴食にきたのだ。ケチな朝酒で満足などできはしない。焦がれるメイン。待ち続ける質量。肉、飯、汁のトリニティによる魂の救済。まだか、まだか……


「牛丼並チーズ卵トッピング牛皿炙りカルビ豚汁のお客様」


福音、鳴る。

悠々と立ち上がり、受け取り、卓に並べる。壮観。欲望、抑圧からの解放。体現された贅の一と時。噛み締めるまでもなく、至福。グラスを空けて、貪る、貪る、貪る! 腹に溜まりながら尚も促進される食欲。こうなってはもう止まらない。ひたすら己のために、俺は喰らうのだ!


……


……あまりに満腹。食べ切ったが、後悔が津波のように押し寄せる。なんか牛丼半分くらいで満足しちゃって、後半は惰性で口に運んでいた。膨れた腹が過去の俺を責める。朝から2000円程度の散財。今日の昼夜は、なしでいいや……

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