1-4 高額請求が怖い
はっ、危ない意識が飛んでいたんだよ。
さっちゃんが理事長、そんな訳無いよ。
「さっちゃん、嘘は駄目。勝手にそんな事言ったら怒られちゃうよ」
嘘はいけないよさっちゃん。
私達同級生なんだから、理事長なんて無理でしょ。
「
「やめて言わないで!信じるから──!!」
単語の間違いは、自己採点時に確認したから、知ってるよう恥ずかしい!
「本当にさっちゃん……理事長なんだ」
凄いなぁ。私と同年代なのに、この華ノ恵学院の理事長だなんて……んっ?
「華ノ恵学院……さっちゃんの名字って確か、華ノ恵────」
華ノ恵だ! なんで気付かなかったの私!
「ようやく気付いたのですね……猪突猛進ですか貴女は」
それも言われた事あるけど、私猪じゃないよ!
「何で、私猪って言われるの?」
さっちゃんが溜息ついた!? 酷いよ!
「桐藤さん、貴女の印象が変わりました」
うんうん、私は立派なレディだよ。
「顔に感情の乗らない、ただひたすらに真っ直ぐな、『ウリ坊』ですわ」
ウリ坊って猪の子供だからね!
「私は子供じゃ無いよ!?」
身長は仕方が無いもの!
「あら? 私は可愛いと、言ったつもりでしたのに」
そうなの、私可愛い? うへへへ。
「可愛いお顔が台無しですわ!」
急に百八十度変わった!?
「なんでさ急に! 可愛いって言ったのに!」
さっちゃん変だよさっきから!
「桐藤さんは、笑うと駄目です怖いです。なぜそんな笑い方なのか……勿体無いですの」
はいそれは知ってますよーさっちゃん。
「仕方無いじゃん。お父さんが死んじゃってから、上手く笑えないもん……ぐすっ、うぅ…」
思い出したら、涙が出て来たよ。
駄目だ私!
「御免なさい桐藤さんっ、理由も知らずに酷い事を、言ってしまったわ!」
慌てたさっちゃんが、車椅子を動かして私の隣に来たよ。なんで頭撫でるのさうぅ。
「御免なさい……かのちゃん」
何て!? 今何ていったのさっちゃん!!
「さっちゃん、今私の事かのちゃんって……」
うわぁ……嬉しいなぁ。かのちゃん、かのちゃんかぁ。
初めてママ以外の人に言われたなぁ。
「あ……桐藤さん今、笑顔がっ────」
んっ、どうしたのさっちゃん顔赤いよ。
「さっちゃんどうしたの?」
さっちゃんの顔を覗き込むと更に顔が赤く?
風邪かなぁ……理事長やってたら、疲れるだろうしね。
「それで、何で私理事長に呼ばれたの?」
さっちゃんが自分の顔を、パンッって叩いて、また机の向こう側に行ったけど、痛く無いのかな。
「危なかったですわ……(可愛いじゃ御座いませんの)」
さっちゃん小声で何か言ってる?
「何か言ったさっちゃん?」
「いいえ何でも無いですわ! それで、来て頂いたのは、確認したい事があるからですの」
食い気味に否定してきたよ、まあ良いけど。
「確認って、なにを聞きたいの?」
私、この学院来てまだ初日だよ?
何を確認したいのさ。
「桐藤さん、昨日は何を食べたのですか?」
うーん、かのちゃんって言ってくれない。
少しずつ仲良くなろうかなぁ。
昨日のご飯は──お母さんに送って貰った、牛肉と玉葱で、丼ものにして食べたよね。
「牛さんの丼もの食べたよ?」
美味しかったなぁ……。
お母さんの行き付けのお肉屋さんに、時々、大安売りでお肉が売られていて、安いのにそれが美味しいの。
「牛なのね……"ミノ"なのかしら……」
お母さんに送って貰った中には、ミノは入ってなかったよね。
「ミノは無かったよさっちゃん」
それを聞いたさっちゃんが、また苦笑いした! ミノって言っただけなのに!!
「さっきから何なのさ! さっちゃんっ!」
私は、目の前のテーブルを軽く叩いた。
それこそ、トントンぐらいのチカラで。
軽く叩いただけなのに
────ドンッ!! バキィッ!────
と音を立てて真っ二つになった。
「……なんで?」
なんで……老朽化?
私が止めを刺した?
高額弁償……そんなお金無いよ!!
「落ち着きなさい桐藤さん!」
うぅ……さっちゃん笑顔で怖い。
「大丈夫よ桐藤さん。弁償なんてしなくても良いし、請求なんてしませんわ」
ホントに……高額請求されない?
「そんな眼で見てこなくても、大丈夫よ。あと、ついでにコレを、握って貰えるかしら」
何それ、綺麗な石……。
「握れば高額請求しない?」
さっちゃんが怖い笑顔で頷いた。
握るしか無い。
じゃないと高額請求がくるっ!
「そんなお金、家には無いもんっ!」
力の限り握った。
それこそ石を、親の仇の様に握り締めた。
「もう良いわ、手を開けてちょうだい」
もう良いの? じゃあ石を……粉々になってるんですけど……どどどうしよう!?
私は震えが止まらない。
だってあんなに綺麗な石ならっ、絶対お高い宝石だよねっ!!
高額請求が来ちゃうっ!?
「ふふっ」
なんで笑うの、宝石壊れたのにっ!
「御免なさいっふふっ。あれは宝石じゃ無いわ」
宝石じゃない……っ、それならっ、弁償しなくても良いのね!
「あれはね桐藤さん……」
うんうん。アレは何の石なのさっちゃん。
「魔物の核、"魔石"って言うの」
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