【リライト】三杉 令 様 『夢のフィールド』
【原作品タイトル】
『夢のフィールド』
【原作者】
三杉 令 様
【原文直リンク】
https://kakuyomu.jp/works/16818622176276612913/episodes/16818622176277037168
【作品URL】
https://kakuyomu.jp/works/16818622174199934330
【リライト者コメント】
リライトがきっかけで読ませて頂いたのですが、素直に続きが気になる作品だと思いました。サッカーがテーマの本作ですが、スポーツ素人の私も楽しめる作品でしたよ! ちょっとSF要素を感じる場面もあるのですが、物語の流れも描写もとってもリアルです。
まだ、読み始めたばかりなのですが、ほのかに恋愛要素もあるのかな……? というのも気になるポイントですね。明日香ちゃんと柊さん、年の差ペアがどうなるのでしょうね? 続きも楽しみにしています!
というわけで、スポーツ素人の上、本編も途中までしか読んでいない私が、またまた好き勝手に書かせてもらっております。
解釈違いがありましたら、本当に申し訳ございません。
この場を借りて、三杉 令 様に、心から感謝を! 素敵な物語をありがとうございました!
==▼以下、リライト文。============
「バイクって、気持ちいいですね! 私、初めて!」
雨の中、二人を乗せたバイクが隣町のショッピングモールに着いたとたん、明日香が興奮気味に言った。
「まあね。でも、晴れたらもっと気持ちいいよ」
雨に濡れたウインドブレーカーを片付けながら柊が答えると、明日香の青い目がキラキラ輝いた。
――まるで、雨上がりの町みたいだ。
その光に思わず見とれてしまった柊は、あわてて瞬きした。
「そうだ、今度は晴れた日に乗せたげようか?」
「え、ほんとですか?」
やったー! と、明日香は水たまりを踏みつけながら飛び跳ねる。
「見て、見て! 柊さん、あっちに虹が出てるよ!」
「ほんとだ、きれいだね」
――やっぱり、まだ小学生だな。
柊が忍び笑いをしながら、ウインドブレーカーの片づけに戻った。
――まだ、小学生だろうに……
映画館の入り口で、柊は苦笑いを隠せないでいた。
「……明日香ちゃん、ほんとにその映画でいいの?」
「はい!」
青い目を見開いて、力強くうなずく明日香。
彼女の目の前にあるのは、洋画のポスター。美しい南の島のビーチを背景に、青い目の金髪の女と、黒髪の凛々しい男が見つめあっている。火傷しそうなくらいに熱い二人の視線を見れば、タイトルを知らなくても断言できる。間違いなく恋愛ものだ。
「うーん……」
柊はぽりぽりと頬を掻くと、大げさに隣のポスターを指さした。
「……あ、これ、人気マンガの実写のやつじゃん! 明日香ちゃんも知ってるんじゃない? これなんか――?」
「いえ! これがいいんです!」
きっぱりと言い放つ明日香。
これ以上の議論は不要だった。
「……うん。行こうか」
柊は大人しくチケット売り場へ向かった。
――やっぱり、まだ小学生だな。
柊の予想通りの熱い恋愛映画を見終わった後だった。
二人で入ったカフェで、柊は小さく忍び笑いをする。
「いえ、柊さんと同じのでお願いします!」
きっぱり言い放った明日香の目の前には、湯気の立ちのぼるブラックコーヒー。
最初の一口で「アチッ! 苦っ!」と小さな悲鳴を上げた明日香は、それ以降カップに触れようとしなかった。
「あのね、柊さん! 私、さっきの映画見て思ったよ!」
並々と注がれたままのコーヒーカップを脇に押しやって、明日香が熱っぽく語り始める。
「私、やっぱり外国に行きたい! 英語とかたくさん覚えるね!」
「あのリゾートは本当に行きたくなるよね。たしか、アフリカの近くの島だっけ?」
残り半分くらいになったコーヒーを味わいながら、柊がうなずいた。
「うん。あんな夢の様な場所があるんだね! 私、将来は、絶対、あそこに行くから!」
――世界中の貧しい子供たちに、サッカーを教えてあげたいんです――
柊の脳裏に、二人でサッカーをしたあの日に聞いた、明日香の夢が、こだました。
「サッカーやりたい子供はいるかな? 観光客だらけのような気もするけど」
「絶対いるよ! あういうビーチには可愛い子供が似合うし!」
きっぱりと言い放つ明日香の青い瞳は、キラキラと輝いていた。
「……――だといいね」
柊はあわてて瞬きして、答える。
まただ。また、あの光に見とれていた。
「……ねぇ、柊さん。今日が、最後なんだよね?」
カフェの座席に座ったまま、明日香が、もじもじしながら問いかける。
「まあ滞在はそうだけど。来週以降も月に何回か会いに来るよ?」
「そうだけど……」
明日香は少しためらってから、きっぱりと言う。
「……あの! 柊さん! 一つだけ、わがまま言ってもいい?」
――やっぱり、まだ小学生だな。
アクセサリーショップの前で、柊は苦笑いを隠せないでいた。
「……明日香ちゃん、本当にそれでいいの?」
「はい! 柊さん! ありがとうございます!」
青い目をキラキラ輝かせて、力強くうなずく明日香。
彼女の利き手には、真新しいミサンガが巻かれていた。
それは、カラフルなミサンガだった。明日香の『わがまま』を聞いた柊が贈ったそれは、まるで、雨上がりの空にかかった虹のよう。
でも、お値段に関して言えば。さっきのカフェのケーキセットの方が上なわけで。
「うーん……」
柊はぽりぽりと頬を掻きながら、他の品を物色する。
「僕、アクセサリーとか詳しくないけどさ、ブレスレットなら他にもあるよ? ほら、こっちのチェーンのやつとか――?」
「いえ、これがいいんです!」
きっぱりと言い放つ明日香。
これ以上の議論は不要だった。
「……うん。行こうか」
大人しく歩き始めた柊の背後で、明日香は虹色のミサンガを空に掲げる。
虹の消えた空は、もう日が沈みかけていた。
でも。
夕日色の顔で微笑む明日香の利き腕には、小さな虹がかかっていた。
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