召喚したらカレシを名乗ってきた溺愛系悪魔くん
芽久檸檬
第1話 召喚は失恋のあとで
「おおきくなったらけっこんしてあげる」とそんな約束が
あやふやになってしまう年月に至るまで。
私、天野こよみはそんな言葉を一心に信じてきた。
それなのに、それなのにだ。
よりにもよってだ。
夕焼けに染まる坂道の途中で、私は偶然にも片思い中の祐樹を見かけることに
なる。そこまではよかった。そこまではよかったのに
前方数メートルで笑顔で歩く幼馴染と腕に抱きつくピンクの
ワンピースをきたいかにも可愛らしい女の子と一緒に歩いていて、
お似合いのように見えてしまった。
そういうのがタイプだったんだと自分に自己嫌悪が走った私は
気づけば私の足元の影が夕日で長く引いていた。
祐樹がこちらに気づいて、少しばつの悪い顔をした。
「こよみ!!もしかして、帰り??」
「うん、ちょっと用事を思い出してから、
もう行かないと……」
お二方お幸せにー!!
完璧な笑顔に相手に傷つかないような嘘を自分にもついて、
逃げ出すように思いのまま、走り出した。
もっと、早く言えばよかった。と自分だけが特別で近くて、甘えて、
それが当たり前だと思っていたのに。
失敗して、後悔をするのが嫌なのを言い訳に言葉に出来なかった。
隣にいられないという、可能性が私にとって怖かった。
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帰宅してすぐに部屋の枕に顔を突っ伏した私は気づけば、
枕を濡らしていた。
「なんで、あんな……よりにもよって、真逆なタイプと
祐樹のアホ……」
と自分の容姿であるだろう、黒髪地味眼鏡という、
どちらかといえば成績で勝負、学力第一な私に勝てるはずもなく。
それ以外の主な特徴がありそうでないような自分を恨まざる終えなかった。
女子力??なにそれ美味しいの??
何が、人間は中身だ。と思いながら、
イヤホンで萩原敬之の曲を聞きながらの日が続いていた。
「いいもん、それだったら、私だって恋人くらい作ってやるー!!」
そんなある日のことだった。
物置の中身を整理したいと母から手伝いをする日のこと。
私は一冊の本が目に入った。
洋書のような表紙で英語タイトルから何が書かれているか分からなかったが、埃を払いながら開いてみると、中身のページは全部日本語で翻訳されていた手書きの文字で構成されていた。
夜、そんな洋書を自室で読んでいると、
ーー理想の恋人
は??
私は思わず声を漏らした。
しかし、そんな気持ちもあったがそれ以上に言葉に釘付けになった。
ページをめくっていくと理想の恋人と一緒になれるというような記述に
胸をときめかせざるおえなかった。
その他にも、具体的なチョークで魔法陣を書いたり、
血を触媒に物を呪わす方法だったり、完全にアウトな儀式方法だが
よりにもよって自分の祖父がこんなオカルト本を持っていることに衝撃を受けた。
でも、別にこれ実際の魔術書じゃないよね??多分??
思考が妙な方向へねじれていくのが自分もわかった。
でももうそんなことはどうでもよく、祐樹へのあの光景に。
あの出来事にーー気を紛らわしかった。
私は机の上に本を置き、名前ペンを手にとって
床に紙を敷いて記述に書いてある方法で魔法陣を描いていった。
理想の恋人……自分の願望を口にした。
「じゃあ、祐樹よりも優しくて、私の話をちゃんと聞いてくれて、
でもちょっと強引な感じで、イケメンで……馬鹿じゃない人!!!!」
かなり、わがままに最後の方は私でも少し
何を言ってしまったのかわからないが言っても後の祭りだ。
私は魔法陣に向かって、両手を合わせて上げて、それっぽい詠唱を唱えた。
「我が願いを聞き届けし者よ、この願望を叶え、現れ給え!!」
ーー沈黙。
……まあ、そりゃそうだよね。
出るわけないか。
そう思う次の瞬間。
「え、ちょ、嘘で、え、え、え、ーー」
部屋の証明がパチンと落ち、代わりに魔法陣が光り始めた。
眩しい閃光の中、私は腰を抜かしてしまい、その突然の出来事に
困惑の感情しか頭に浮かず、目を開けた瞬間。
長身、金髪のブロンドヘア、くっきりとした顔立ちに、ゆるく羽織った黒コートと白シャツ姿はまるでファッション誌から飛び出してきたような美形が、
目の前に現れ、私を見て微笑んだ。
「⋯⋯ん??召喚者??え、うわ、マジ??なんかすっごく可愛いんだけど」
「??」
「俺、ルカ。召喚に応じて彼氏として召喚されました。
よろしく彼女ちゃん」
「ーー彼女??」
一瞬、頭が固まってしまった。
誰が誰の彼氏??
「え……??えっと、彼女??誰の??」
「??嫌だって、理想の恋人来てって言われたから、それって完全に俺じゃん。
え、一目惚れ何だけど、これって運命じゃない??」
軽くウィンクするその顔は自信に満ち溢れていた。が私はその状況に頭を抱えた。
私は頭を抱えて叫ぶ他なかった。
なんで、こうなった??
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