三界戦記:ダンジョンマスター、世界の秩序を乱す
ささみメンタル
第1話 地に堕ちる者
千年に及ぶ戦争は、もはや信仰でも正義でもなかった。人類と魔族──互いに憎悪の業火を抱き、終わらぬ殺し合いを繰り返すだけの機械のようだった。
ルトス・クロヴァンは、和平を望む戦略家だった。数少ない魔族の穏便派と接触し、停戦交渉を試みたが、それは罠だった。穏便派など最初から存在せず、和平を望む者こそ排除すべきと見なされていた。
逃げるように戻った先、人類の議会もまた彼を拒んだ。「裏切者」として。中立の声は、戦意を削ぐ毒だと。
傷だらけの身体で辿り着いた断崖。前には剣を構える過激派、後ろは深い奈落。血が滴り、呼吸が焼ける。
「……俺は、戦争を終わらせたかっただけなのに」
その言葉に答える者はいなかった。そして、剣が振り上げられる。
「どちらもいらない! この世から消えてしまえ!!」
その瞬間、世界が悲鳴を上げた。空が裂け、雷鳴のような音が天地を揺らす。崖の下に、黒い裂け目が現れた。大地が震え、重力すらねじ曲がるような力がルトスを呑み込む。
落ちていく。引き裂かれた空間の奥へ、際限ない深淵へ。
──色が、なかった。音も、温度も、時間の流れも。そこには何もなかった。ただ、己の存在だけが、かろうじて浮かんでいる。
その虚無に、“何か”が滲んできた。
《ここは面白い場所だろう?》
声ではない。だが、意味が直接脳を満たす。
《争いに絶望したお前、いい目をしていた。どちらも捨て去る者。実に、面白い》
それは神だった。光でも闇でもない。面白ければ何でもいいという、混沌の観客。
《お前に一つ、贈り物をしよう。第三の選択肢を、戦場に刻め》
そのとき、大地が再び裂けた。人類の地にも、魔族の領にも、奈落の穴が穿たれる。
世界に、“ダンジョン”が誕生した瞬間だった。
そして、彼の物語が始まる。神さえも震え上がる名──ルトスの物語が。
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初めましてささみメンタルです。
今まで読む専門だったのですが書きたくなって書いてみた処女作です。
もし今後見てみたい展開とかあったら書いてみてください、書いてみるかも?知れないです笑
とりあえずストックが25話くらいあるので読んで楽しんでくれる方が現れたら連載を続けたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
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