第7話 妙な体験

「ユウキくん、遊びましょ」


 いつから、その声を聞くようになったのか。もう、覚えていない。その声を聞くたび、本能的に良くないことだ、と感じた。と、同時に懐かしいような気がした。


 四六時中、聞こえていたような気もする。


 その声が自分だけにしか、聞こえていないと気づいていた。だから、聞こえていないふりをした。


 時々、家のドアを叩くこともあった。もちろん、自分だけしか、聞こえていないらしいと、わかっていた。頻度は増えていくばかりだった。


「なんで置いてったの」


 泣くように、そう言う声に。人間味をどこか感じさせる、その声に、恐怖を覚えるようになった。


 それが、なんのことかわからなかった。


「怒ってないから、また、あそぼー」


 なんのことだかわからないから、ひたすら、怖かった。知らないナニカは、いつも、一方的に話しかけてくる。


 ただ、どこかに向かわなければ行けない、という焦燥感だけが、確かにあって。それが怖くもあった。


 夜が嫌いになった。

 虫が苦手になった。 

 怖いものが苦手になった。


 その声を聞くようになってから、そうなった。


「なんで来てくれないの?」


 段々、声は急かすようになった。きっかけは、思い出すことができない。



 お母さんは、自分のことを、気味悪がるようになったのはいつからだったのか。明確に思い出すことは難しい。


 お父さんは、いつだって興味を持ってくれないから、別にどうでもよかった。


 友だちは気づくといなかった。


 最初からそうだったのか、何かを期に、いなくなったのか。それすらもわからない。学校の先生も、腫れ物を目にしたような態度。



 居場所のなさ。自分自身へ覚える謎の違和感。


 ほんとに自分はこんなやつだったか? 誰も答えてはくれない。それはそうだ。


 下校中の出来事で思い出すことがひとつある。知らない、年上の男の子が追いかけてきて、「ナツキを返せっ!」と一方的に怒鳴られた。


 なんのことだかわからなかった。




 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る