指紋のない手の跡(140文字小説 連作)

世原久子

第1話.クローゼットの隙間(140文字小説)

世原久子 | 紬

@novel140tumugi


閉め損ねたクローゼットの隙間が妙に暗い。手を差し込んだらひやり柔らかく、どこかへ連れて行かれそうな黒。以前からこんな風だったかは思い出せない。扉は照明を受けてほの白く、なんだかよそよそしい。フローリングに腰を下ろして眺めていると落ち着かなくなってきて、けれど扉を閉められずにいる。


20:59 2025/5/23 160回表示

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