こはくが触れてくるたび、わたしの世界がバグっていく

ライカ_Lyka

プロローグ 


 まさか、自分が恋をするだなんて思ってもみなかった。

 こんなにも、息が詰まるような気持ちになるだなんて。

 誰かの言葉ひとつ、しぐさひとつで、こんなに世界の色が変わるなんて——

 そんなの、知らなかった。


 ほんの少し前までは、「ふつう」だった。

 教室では窓から光が差して、風がカーテンを揺らして、

 何気ない会話と、ほどよい距離感が、わたしの世界のすべてだった。


 あれは、たしか——

 やりたいことがなにもなくて、立ち尽くしていたときのこと。

 ただそれだけだったはずなのに。

 

 目が合って、呼ばれて、

 手を引かれて、何も言えずに、そのまま隣にいた。

 その瞬間から、何かが狂いはじめた。


 世界のバグは、いつだってささいなきっかけで始まる。

 そして気づけば、もう戻れなくなっている。


 ——これは、そんなわたしの、ふつうじゃなくなっていく日々の話。

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