【自主企画】みんなでリライトしよう♬【参加用】

りつか🌟

りつかのリライト文

宇宙樹の生贄~アムルと不思議な竜〜/風雅ありすさま

【原作品タイトル】

 『宇宙樹の生贄~アムルと不思議な竜〜』


【原作者】

 風雅ありすさま



----------[リライト文ここから]----------



 広場を見渡していたアムルは比較的開けた場所を見つけるとイサールをそこまで引っ張っていった。一体どうするのよ、と目で訴えるも彼女から返ってきたのは無邪気な微笑みだけ。

 アムルはイサールを離し、すぅ、と息を吸いこんだ。


「さぁさぁみなさん、聞いていって、見ていって! ウィンガムいちの舞姫が踊りますよぉ~♬」


 よく通る高い声に通行人の何人かがちらちらと視線を寄越す。けれど足を止める人はいない。アムルはめげることなく再度声を張り上げた。


「ウィンガムいちよ! 世にも美しい舞ですよぉ! 今日この場にいる人は、みーんな運がいい! ウィンガムに来たばっかりの人も、ずっとここに住んでる人も、イサールの舞を見て幸せになってねぇ! ……さっ、イサール♪」


 どん、と押し出されてイサールは空足を踏んだ。振り返ればアムルは期待のこもった笑みで力一杯手を叩いていた。それ、盛り上げているつもり?


「さっ、じゃないわよ! 踊れるわけないでしょぉっ!」

「どうして? イサールは、踊りが上手だったんでしょう? ワトルが褒めてくれるくらい」

「それは二年以上前のことよっ。大体どうして踊ることになるのよ! 私が!」

「イサールの舞を見れば、きっとみんなイサールの話を聞いてくれるんじゃないかな。そうしたら『風樹のために祈って』ってお願いすればいいよ!」


 笑顔で両腕を広げてみせるアムル。その得意げな顔のど真ん中に『名案でしょう!』と書いてある。

 イサールは額に手をやりその場に屈みこんだ。身体中の空気を全て吐き出す勢いで深く溜息をつく。


「あんたって子は……。どうやったらそういう発想になるのよぉ……」

「イサール、もしかして、踊るの嫌? ……あ、舞が上手って、嘘なの? ほんとは、みんなに見せられないくらい下手くそ……」


 ひくり、とイサールの頬が引きつる。僅かに顔を上げれば少女のまっすぐな眼差しとぶつかった。そこに宿っていたのは「申し訳ないことしたかも」という気遣いと心配、それに後悔の色。

 イサールはむっと眉間に力をこめた。


「……言ったわね。いいわ、見てなさいよ。私の舞を見て、惚れるんじゃないわよっ」


 すっくと立ち上がったイサールは目を丸くしている少女を見下ろしウィンクする。

 さらに数歩離れ、懐から取り出した小銭入れをアムルに投げた。きょとんと見つめる彼女にそれを叩くよう手で合図する。

 自分の腰に巻いていた薄布をほどくと肩にかけた。それから髪留めに使っていた飾りを二本引き抜き、それらを重ねて打ち鳴らす。細長い銀色の先端からぶらさがる飾りがしゃらん、と繊細な音をたてる。

 軽く手足を振り、その場で二、三度飛び上がった。足腰は衰えてない――いける。


 しゃん、と手にした飾りが開始の合図を鳴らした。


 手足の指の先の先まで神経を張り巡らす。のびやかに、しなやかに。地を蹴り、宙を舞い、這うように滑る。くるりと回れば翡翠の髪が視界を横切った。自らの髪の軌跡、それに肩の薄布の動きも相まってまるで風が吹いているかのように見えるはず。

 リズミカルな金属音が響いていた。アムルだ。イサールの指示通り、一生懸命に小銭入れを叩いている。その目は期待と羨望にきらきら輝いていて、思わずイサールの口角が上がった。彼女にまんまと乗せられた気がしなくはなかったけれど、不思議と嫌な気持ちはなかった。むしろ深刻に悩んでいた自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。


「イサール!」


 アムルが歓声を上げる。イサールも負けじと微笑んだ。

 少女の音に合わせ、イサールの靴底が石畳をカツンと叩く。手の中で髪飾りがしゃらりと鳴く。

 突如、小鳥の囀りが空気を振るわせた。ハッと仰げばひとりの男が小さな横笛を構えていた。それどころかイサールとアムルふたりの周りにはたくさんの観衆で輪ができていた。一体いつの間に。

 明るく高く軽やかに奏でられるのはこの地方の民族音楽。笛の音に合わせて旋律を口ずさむ人、手拍子を鳴らす人、大きな鍋をフライ返しで太鼓代わりにしているのは金物屋の主人か。目があったのでウィンクを送れば彼の頬がさっと赤くなった。

 イサールの舞にますます熱が入る。観衆の熱気がひとつに合わさる。広場が一体化し、その場にいた全員の心が最高潮に達するかと思われた。そのとき、


「おまえらか! 最近この街に居座っている余所者よそものは」


 野太い声が響き渡った。イサールも観衆もぴたりと動きを止める。

 人垣を割ってひとりの男が現れた。腰まで届く長い黄金色の髪が印象的な大男だ。肩から何かの獣の毛皮をかけており、半裸の上半身は鍛えられた筋肉が隆起している。見るからにといった風体だ。

 彼らの登場に誰からともなく去っていく。消えていく観衆を横目にイサールは髪飾りを髪に戻した。アムルも不安そうな面持ちで歩み寄ってきた。

 大男は背後にぞろぞろと人相の悪い男たちを引きつれていた。その中にギラギラした目で睨みつけてくる者がひとり。彼の指がおもむろにイサールをさした。


「あいつです、お頭」

「……俺の部下たちが世話になったな」


 大男はふんと息をつくと両腕を胸の前で組んだ。太くて逞しい腕には黒い縞模様の入れ墨が刻まれていた。

 イサールはハッと息を呑んだ。


「あんたは……!」




----------[ここまで]----------



【原文直リンク】

https://kakuyomu.jp/works/16818622176238440603/episodes/16818622176269690552


【該当話直リンク】

https://kakuyomu.jp/works/16817330654352003830/episodes/16818093084380432992


【リライト者コメント】

 舞の描写を〜ということだったのでイサールさん視点にして、アクション苦手なりに書いてみました。(体育3の人です……)

 あっちこっち入れ替えたり書き加えたりしてます。あと思いっきり手癖です! 語彙力ください!ヽ(;▽;)ノ

 アムルのお話気になってるんですがまだ未読で……! でも未読の方がかえって面白いのかもとそのままGOしました。いつか読了後にこれを読み直したら黒歴史になってるのではという恐怖……。(震)

 解釈違い起こしてたらすみませんっっ。ありがとうございましたー!


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