3.ラクシャーサ先生
ラクシャーサ先生というのはハイエルフでシェリアザードの家庭教師である。
実はシェリアザードにとってラクシャーサは初恋の人なのだ。
『シェリアザード。彼はラクシャーサ=ヴィルファーレ。今日からシェリアザードの家庭教師だよ。挨拶なさい』
当時、五歳児だったシェリアザードは、エルフやハイエルフは金髪で華奢な身体つき、中性的な美貌を持っているのが基本なのに、先生は黒髪で、目つきは獲物を狙う猛禽類のようにちょっと鋭いけど男性らしい美しさを持つ人って本当に居るんだ・・・って感動して見惚れていた。
家庭教師になってくれるラクシャーサに対して師を迎える弟子のように挨拶しないといけないのに
『先生!好きです!私と結婚して下さい!』
ってプロポーズしてしまったのだ。
『私の生徒となるシェリアザード王女は面白い姫ですね』
・・・・・・幼いシェリアザードの初恋は秒で終わったけど。
声は出さなかったものの、肩を震わせて笑っているラクシャーサ先生の姿は今思い出しても心が痛い・・・。
シェリアザードの初恋はどうでもいいとして──・・・。
ハイエルフが何で人間の娘であるシェリアザードの家庭教師をしているのか?って疑問に思わないだろうか?
ラクシャーサはハイエルフでも変わり者と言えばいいのか、好奇心旺盛なのだ。
某世紀末救世主とまではいかないけど、それなりに鍛えているからマッチョだし、長身だし、歩く18禁な雰囲気だし、何よりエルフやハイエルフ特有の閉鎖的な風習を嫌っていて、今でこそアメシスティナ王国に腰を落ち着けているが、若い頃は冒険者になって世界各国を旅して財宝を手に入れていたのだ。
トレジャーハンターという奴である。
そんなラクシャーサが何故シェリアザードの家庭教師を引き受けてくれたのかと言うと、幼いのに魔法と武術の片鱗を見せていた彼女に興味を持ったからだったりする。
一言で言えば『面白れぇ女』って奴になるのかも知れない。
まぁ、シェリアザードがそうなのは神々による修行で、その成果を魂魄に刻み込んでいるおかげなのだが・・・。
そんなシェリアザードだが今になって気が付いた。
・・・何でティアナ様をはじめとする神々はチートを、それこそ〇リーザ様のように惑星〇ジータを簡単に破壊したエネルギー玉・・・〇ーパーノヴァとか、〇スビームいった力を与えてくれなかったのだろう?
───と。
自分の問題は自分で解決しろ!というのが神々の総意なのだろうか?
(・・・・・・深く考えるのはよそう)
「ラクシャーサ先生」
「シェリアザード王女、ご機嫌麗しゅう。私に何かお聞きした事でもおありで?」
侍女のステファニーと一緒に書庫に足を踏み入れたシェリアザードはラクシャーサに尋ねる。
冒険者になれば私でも竜を倒す事が出来ますか?
「それは・・・不可能だろうな」
ラクシャーサ曰く
武器防具を最強装備にした上で強い仲間、回復薬の基本とでもいうべきポーションだけではなく万能薬といった薬を用意していたとしても竜を倒すのは無理なのだと。
「軍隊であれば竜を倒すのは可能だと思うが、それでも半数以上の死者が出ると覚悟した方がいいだろうな」
或いはフェニックスやガルーダといった聖獣、ヨルムンガンドやケルベロスといった魔獣を仲間に出来たら可能かも知れぬが・・・
「ラクシャーサ先生、
「
何せ古代竜は嘘偽りを並べる者を嫌うからな
ラクシャーサの言い分を纏めると、シェリアザードが古代竜を仲間にするのは不可能という事である。
「シェリアザード王女。何故、このような事をお聞きになられたので?」
白竜族を神から素材という立場へと陥れる為だという事を口にする訳にはいかないシェリアザードは、ラクシャーサの問いにこう答えた。
「自分で自分の身と心を護れるくらいに強くなりたいからです・・・」
「・・・・・・そうか」
(素手でオーガを倒せるのに、我が弟子はそれ以上に強くなりたいのか!!?)
シェリアザードの顔を見て心の中でツッコミを入れたラクシャーサは穏やかな笑みを浮かべながら優しく頭を撫でる。
(私、十五歳で来年には成人になるというのに・・・)
子供扱いされたけど、今のシェリアザードにはラクシャーサの手が大きくて、余りにも心地良くて───。
(私に触れているのがレオンハルト様の手だったら・・・どんな気持ちになるのかしら・・・?)
「ラクシャーサ先生、ご教授ありがとうございました」
(先生は私の事を生徒や弟子としか思っていないのに・・・)
これ以上触れられてしまったら変な期待を抱いてしまいそうだと思ってしまったシェリアザードは、ラクシャーサにカーテシーをして自室へと戻る。
※後にシェリアザードはラクシャーサに対して抱いていたのは、画面越し見る芸能人とかに対する憧れのようなものだと気づきます。
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