第6話 共闘の予感

ゴブリン討伐を終えた俺、タイチは、採取したゴブリンの右耳を握りしめ、冒険者ギルドへと向かった。カウンターの女性職員は、最初は半信半疑の顔をしていたものの、右耳が確かにゴブリンのものであると確認すると、笑顔ではあるが最低限の報酬をくれた。それでも、追放されてからの数日間で初めてのまとまった現金だ。


「よし、これで当面の飯は食えるぞ」


俺は街の賑やかな大通りにある食堂へ向かった。質素だが温かいスープとパンを注文し、久しぶりのまともな食事を噛みしめる。戦車の燃料(魔力)と弾薬ポイントの消費を考えると、まだまだ安心はできないが、まずは今日を生き延びたことに安堵した。


食事を半分ほど終えた時だった。突然、俺のテーブルの脇に小さな影が立った。顔を上げると、そこにいたのは、俺と同じくらいの年の少年だ。年のわりに小柄で、汚れた服を身につけ、怯えたように俺を見上げている。


「あ、あの…その…」


少年は、どもりながらも懸命に話しかけてきた。よく見ると、彼の目には絶望の色が滲んでいる。話を聞けば、彼もまた俺と同じ「追放者」だという。


彼の名はリオ。職業は盗賊で、罠解除スキルを持っているらしい。しかし、この世界で盗賊職はあまり歓迎されず、彼もまたその特殊なスキルゆえに、どこかの屋敷から追放されてしまったと言う。持っていた金も尽き、空腹で倒れそうだと、か細い声で俺に助けを求めてきたのだ。


もしもう少し前の俺だったら、きっと断っていたかもしれない。見ず知らずの、それも追放された盗賊という胡散臭い少年に、金を恵む余裕などなかったはずだ。だが、この数日間の孤独が、俺の考えを変えていた。


「…分かった。俺がごちそうするよ」


俺はテーブルの向かいを指差した。リオは信じられないといった顔で目を丸くし、やがてボロボロと涙をこぼしながら、何度も頭を下げた。


そして、食事をしながら、俺は思い切って提案した。


「なあ、もし良かったら…俺とパーティーを組まないか?」


リオは驚いたように顔を上げた。確かに、どこの誰かも分からない、性格も怪しいかもしれない人物だ。それでも、俺は一人でいるのが寂しかった。この世界でたった一人、戦車に乗って戦うことの心細さを、身をもって知ったからだ。


「俺はタイチ。この世界で生き残るために、相棒を探しているんだ」


俺の言葉に、リオはしばらく戸惑っていたが、やがて小さな声で「はい…!」と答えた。


こうして、戦車オタクと追放された盗賊。異色のコンビが、異世界サバイバルバトルの新たな一歩を踏み出した。

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