第3話
でも、以前はそうはなかった。
人の顔もちゃんと見えていた。
生きる意味なんて考えなくても、楽しんで生きていた。
いつから見えなくなったかなんて、記憶の彼方に捨て去ってしまった。
でも、最初に見えなくなり始めたのは目だったはず。
その頃、一緒に毎日遊んでいた親友がいた。
いつも通り公園で太陽が沈むまでサッカーして、帰って、寝て、学校に行く。
そこでもいつも通り、朝会って「おはよう」って言って、「今日はどこで遊ぶ?」っ
て話して笑い合う・・・はずだった。
「おっはよー!亮!なぁ、宿題あったのわすれててさ、お前の、見せてくれよ!」
「おはよう、朝から元気だね。
もう、見せるから、ちゃんと次からは自分でやってくるんだよー・・・って、え?」
「うん?おい、どうした?ノート落としたぞ?」
宿題のノートを渡そうとしたが、ノートは僕の手から滑り落ちていった。
冷静になれ、僕。
前日は習い事が2つもあって、とても疲れていた。
だからその時は、昨日の名残でちょっと視界がかすんだのだと思った。
「・・・いや、なんでもない。あ、拾ってくれてありがとう、ノートは貸し出すよ。」
驚く心を抑え、無理やり口角を上げて、笑みを作った。
「大丈夫ならいいんだけど。無理はすんなよ?」
今から考えると、すごく優しい友達だったと思う。
「うん・・・あのさ、今、サングラスとかかけてたりする?」
「え?サングラス?いや、なにもかけてないけど・・・」
「そっか…」
目をパチクリしてみたり、こすってみたり。
だけど、見える視界は何も変わらない。
一晩寝れば戻るだろう。
そんな浅はかな考えは、翌日、美味しそうなフレンチトーストの匂いとともに砕け散
った。
顔がすべて見えなくなるのも、そんなに時間はかからなかった。
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