絵描き

@real-name

第1話

僕はただの物書きである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



あぁ、今日も見れない。


いや、見えない、の間違いだろうか。


「おはよう、亮くん。」


隣で人の声がした気がして、机に突っ伏したまま目線だけ上げる。


目に写ったのは、きゅっと引き締まった体型、カバンに付いた大きな月のキーホルダー。


隣の席の子だった。


「おはよう、杉野目さん。」


淡々と返事を返す。


「やっぱり今日も目を合わしてはくれないんだね。」


少しばかり寂しそうな声で彼女は言う。


彼女の名前は杉野目・咲(すぎのめ・さき)。幼馴染。


美人で、とてもモテている…らしい。


感情のない僕にはあまり関係のないことである。


それに僕は、感情があったとしても彼女と目を合わせることすらできないのだ。


「好きな人と目を合わせられない」のは普通かもしれない。


でも、正確に言えば、僕は「誰とも目を合わすことができない」のだ。


僕の目から見える人の顔は、


たとえどんな人であっても真っ黒に塗りつぶされて見えてしまう。


「顔」と認識したもの以外はすべて見えるのだが、


人物像でも実在する人間でも「顔」だけどうしても見えない。


神様は僕の視界すべてを奪うのではなく、


なぜか僕の見えている「顔」の部分だけを奪い去ったのだ。


不思議な神様である。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る