ダジャレを永遠に言い続けるロボットメイド
伊福千折
ダジャレを永遠に言い続けるロボットメイド
ダ=ジャレーナ遺跡で女性型
メイド服を着ているし、料理とかできるかもしれない。
この娘に料理とかしてもらって食事代を浮かそうと内心浮き足立ちながら帰宅した。
相変わらずボロい家である。貸してもらっている立場上あまり悪くはいえないが、それを込みでもボロい。天井には若干穴が空いてるし、なんなら床も歩くたび木材が抜けそうな音がするし。
そんなことはどうでもいい。この娘を早く起動しよう。
「よし、起動しろ。
フォンフォンフォンという音と共に何故かメイド風の格好をしているロボットの瞼がゆっくりと開いていく。ここらの人間とは異なる青々とした眼が見つめてくる。
「おお、すげー。起動した。」なんていうバカみたいなセリフが思わず口から出てしまう。
ゆっくりとメイドロボットの唇が開かれる。何か言うのだろうか。こう言う時は起動した
「ご主人様......。」
ご主人様!?初めて言われたわそんなこと。やはりこの娘はメイドであるようだ。しばらく静止したのち、メイドは二の句をついだ。
「
最初に思ったことはやけに見えますの部分を強調して喋るなということだった。そして気づいた。
「......は、はは。なかなかユーモアがあるね、君。」
「そうですか。もっとユーモアが欲しいですか?」
「ああ、是非聴いてみたいものだ。できるなら僕が死んだ後くらいがいい。」
「ユーモアをユー、モアということでございますか?」
まただ。もう静寂という言葉ですらもこの静けさには敵わないだろう。体のぶれが床に伝わってきいきいと音が鳴っているのがやけにうるさく聞こえる。
「改めまして、ご主人様。私はダジャレに没頭するロボットメイド、
そういう個性の人工生命体であるとして諦めよう。ダジャレを言い続けても日常生活に支障はきたさないはずだし。
「パンはパンでも食べられないパンは私でございます。」
......やっぱ支障きたすかも。
いや、この娘には料理をやってもらおうと思っているんだ。とっととそのことを伝えよう。
「パンさん、メイドとして僕の食事を作って欲しい朝昼晩全部。できるかな」
「当然、と申し上げたいところでございますが、私目覚めたてで網膜があまり働いておりませんので、必ずしもうまくできるとは限りませんよ。」
「それでも頼むよ。食事代も全然残ってないし自炊はできないし。君が頑張ってくれれば食事代が浮くから〜」
「分かりました。では早速......」
そういうとパンは台所へと向かった。ようやくオヤジギャグ地獄から解放されると思うと胸が空く思いがする。
しかし、それはただの錯覚に過ぎなかった。
野菜を切っている最中。
「いい野菜で癒されてくださいませ。玉ねぎをくし切りにして、にんじんは胃腸にいいイチョウ切りにしてしまいましょう。それでジャガイモは乱切りじゃがどうじゃ?」
肉を切っている最中。
「この包丁、肉を非常に切りにくいですね。
フライパンで肉と野菜を炒めている時。
「パンがフライパンを振っています。まず肉。まな板に張り付いて離れにくいのが憎いですね。そこそこ火が通ったら、そこに玉ねぎ、にんじん、ジャガイモの順で炒めてしまいましょう。」
「飴色に玉ねぎがなりました。一旦つまみ食いをば。お、この飴色の玉ねぎ、あめーわ。すみません発作ですので文脈にそぐわないダジャレ言っていいでしょうか。
『
ダジャレの嵐を乗り切った先にようやく料理が。この匂いは肉じゃがだろうか。懐かしい香りだ。久しく食べていない故郷の味である。
「
なんだかもうダジャレにも慣れてきた。だってそれさえ無視すればこんなにちゃんと料理を作ってくれるんだから。ありがたいっちゃ。
「簡易的な肉じゃがでございます。白滝を入れたき所存でしたが、生憎肉と普通の野菜くらいしかなく......。」
「いや大丈夫。それにしてもうまそうだ。ありがとう、パンさん」
「そーだそーだうまそーだ、ということでございますか?」
「もうそれでいいです......」
ほかほかと湯気が立っている肉じゃがを前に食欲を止められる人間はいない。そうだろう?
ジャガイモを一度口に放れば、なんともいえない弾力感が伝わってくる。そして噛めば噛むほどに旨みがじゅわりと口の中に広がる......。
「いや、最初にあんなギャ......ユーモアを言い出した時は驚いたけど、いい拾い物をしたもんだ」
「ええ、全くその通りでございます。パンは
機能停止。この型のロボットには珍しい。もともとこいつはメイドロボットだったのか?考えるのはよそう。第一僕は
「......これからよろしくな、パン」
「こちらこそよろしくお願いいたします。ダジャレを言うのは誰じゃ、それはパンはパンでもメイドのパンなのです。」
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