第七話・宇宙からも百合を呼ぶ

 その日──近未来的な格好をした、宇宙百合探索グループの責任者に、ユリは浜辺に呼び出された。

 まるで、過去に大ヒットをした某二人組の女性デュエットに似た、丈が長いラメステージ衣装を着た、宇宙探索グループの責任者が腕組みをして空を眺めながら言った。


「この宇宙には、まだ人類が知らない未知の百合が存在しています……それを、探し出すのがあたしたちグループの使命です」

 頭の両側に、変なアンテナのような飾りをつけた宇宙探索グループの責任者は、頭の後ろで片手を広げるポーズをする。


 オヤツの羊羹ようかんを、マツリと一緒に丸かじりしながらユリが質問する。

「それで、どうして浜辺に呼び出したのーっ」

 宇宙探索グループの責任者が、砂浜でシンドバッドのように飛び跳ねて言った。

「いやぁ、宇宙は広いですからね……一応、探索して百合らしき反応は察知したのですが、大きさがわからなくて」

「大きさ?」

「いきなり、巨大宇宙戦艦みたいなのが現れたら、施設も破壊されてしまうでしょう……だから、宇宙トンネルの端末みたいなのを作ったんです」

 宇宙探索責任者が指差した先には、召喚転移トンネルのミニュチュアサイズのモノが研究所からコードで繋がって砂浜に置かれていた。


「これを野外で稼動させれば安全かと……承諾お願いします」

「承諾しまーす」

 あっさりと、許可されたミニ宇宙トンネルが分段で回転する。

 空に稲妻と霧が発生して、重ねたパンケーキ型の円盤が霧の中か落ちてきた。

 砂浜に刺さった円盤をしばらく見ていると、ドアが開いて咳き込みしながら銀青色の未来服を着た、人間型の銀髪宇宙人が転がり出てきた。

「ゲボ@∑@⊕∇∆⊗」

 意味不明の言語で、喋っていた宇宙人が胸のダイヤルを操作すると、普通に喋れるようになった。

「なによぅ、いきなりワープしている最中に変な次元発生させて……どこの辺境惑星?」

 ユリが銀髪の宇宙人に質問すると、自分は百合リリー星人だと名乗った。

「銀河系屈指の百合の星よ……女同士での繁殖は当たり前……この星はそうじゃないの? 遅れてるぅ」


 リリー星人が自慢気に喋っていると、円盤の中から今度は、少し無感情な黒髪の少女が出てきて言った。

「マスター、大丈夫ですか? 大気分析と環境分析の結果はマスターの体への負担は少ないようですが? 未開で危険な雑菌種族なら、両目のレーザーで焼き殺しますが?」


「大丈夫、大丈夫……この人たちとは、波長が合いそうだから、念のために百合サーチしてみて」

「はい、マスター」

 少女の目から照射された光りの筋が、浜辺にいる者たちの体を頭の先から爪先までサーチする。

 サーチがおわった少女が言った。

「百合です……完全な百合です」


 ユリが百合リリー宇宙人に質問する。

「今の目から光線みたいなの出た黒髪の少女は……人間じゃないわね?」

「良くぞ、聞いてくれました……彼女は百合アンドロイドよ、あたしが命令すれば誰とでも寝る……百合限定で」


「はい、あたしはマスターの所有物です……マスターから命令されれば、女性限定で誰とでも寝ます……女性専用のテクニックもプログラムされていますから……アンドロイドですから、経験人数には含まれません、グッズと同じ扱いです」


 ユリが興奮した口調で言った。

「それは凄い、こうゆうのを待っていたーっ、さっそくキスしてみて」

「お安い御用……百合アンドロイド、あたしとキスをしなさい、潤滑液モードで」

「はい、マスター」

 百合星人と百合アンドロイドが、砂浜で抱き合ってキスをする。

「んんんッ……んんんッ」

「んッ……んふッ……はぅッ」

 濃厚な宇宙百合のキスを、浜辺の所員たちはスマートフォンのカメラで撮影した。

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