依頼の来ない何でも屋

第1話 運も貯まればゴミになる


 カランコロンカラン~

  カランコロンカラン~~


 またいつもの事だ。こんな事で運を使うから、俺はいつまでたっても不幸のままなんだ。


 目の前の大きなガラガラから、一等の金の玉が転がり出たところである。


『おめでとうございます。一等、ミネラルウオーター、1ヶ月分です』

 赤い半被を着たおじさんが叫んでいる。

 この時代、ミネラルウオーターがどれほど貴重かは分かっているが、俺にとってはありがた迷惑な話しであった。


「カイン、やったじゃい。これで今月も食費が浮くわ」

 メアリーは嬉しそうに喜んでいる。

 今月も赤字が続く、われわれにとってはありがたいことなのだが、そのおかげで毎度毎度危ない眼に合うのだから、たまったものではない。


 彼女の名前はメアリー、今年22歳の俺より二つ年上の相棒である。生まれは正法国、ドルエドであるが、一年前、この新帝都【みかど】に移住してきたのである。

 メアリーはドルエドではモデルをしていたという事で、手足の長い、スタイル抜群である。

 身長170CMの俺はどうしても183CMの彼女を見上げてしまう事になる。美しい銀色の髪に蒼い瞳の彼女はどこにいても、凄く目立ってしまい、街を歩けば、ナンパとスカウトが自然と吸い寄せられてくる。

 身長はそこそこかもしれないの俺が彼女の引き立て役にしかならないのは正直面白くない。

 そんな俺の気持ちを知らないメアリーは嬉しそうに飛び跳ねている。


 大きなダンボール二つのミネラルウオーターと買い物の荷物を車に積み込むと、俺は年季の入った愛車を走らせた。


 俺の名前はカイン・イガリ。


 この帝で、何でも屋という名の、その日暮らしの生活をしている。助手席のメアリーとの出会いは一年くらい前だが、その時の話はいつかと言う事で。


「せっかく、水が手に入ったと言うのに、浮かない顔ね」

「こんな事ばっかりだから、肝心なときに大変な目に遭うんじゃないか!」


 俺はハンドルを握りながら、肩をすくめて見せたが、メアリーは気にした様子もない。

 今日だって予定外のメアリーの夏服という出費のせいで、クジを引くことになり、また運を使ってしまった。


「そんな事言っても、最後は何とかする。カインは凄いわ」

 誉めてるのか、けなしているのか分からないことを言い出した。


「・・・・・・」

 答えるのも疲れてしまった俺は無言の返事を返した。


 しばらく走ると、俺たちが住むビルが見えてきた。俺はこのビルの一室に事務所を開いている。メアリーはその部屋の居候であった。

 めったに依頼が来ることのない事務所は誰も居ないことが普通だし、用が有れば俺たちが戻るまで、待っているだろう。


 そんな、ビルの前に似つかわしくない、高級車が止まっていた。


“なにかあったか?”


“面倒事は嫌だが、貧乏はもっと困る”

 そう考えながら、車を止めると、メアリーと2人で荷物を持ち、事務所に入った。





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