「ねえ、あの人って？」

「ああ、昔話した元カノ」

「うわー、もしかしてコウちんから話し掛けたの？」

「んなわけあるか。カナも知ってるだろう。あれは俺にとっての特級呪物だよ、金輪際関わりたくもない」

「まあ、普通はそうだよね。でもじゃあアレって自分で浮気しといて一方的にフッたくせに自分から話しかけてきたの？」

「そう言う事」

「いや、マジでどうゆうメンタルしてんのアレ？」

「他人の気持ちを推し量れないんだろう。だから浮気だって平気でするんだよ」

「まあ確かにそうかも。昔はどうか分からないけど今は完全に嫌な感じの女だしね。明らかに私の事見下してたし」

「へぇカナでもそう言うの分かるんだな」

「はぁコウちんは私を何だと思ってるのさ、結構苦労してるだよコウちんの彼女って理由だけで、コウちん見た目も良いから、私は不釣り合いだって良く言われる。そんな女達と同じ目してた」

「そっか……それについては本当にスマン。そんなダサい格好までさせてるせいで」

「ダサい言うな。これ素だし。もっとも私も本気を出せば……」

「うん。それ知ってるからこそ、その格好でお願いしてる。コスプレしてる時とかマジで可愛すぎてヤバイし」

「まあ、あれはあくまでもコスだし。本気というわけじゃないし……もともと興味あったけど、そもそもコウちん隣にいないと恥ずかしすぎてコスとか絶対無理だったし。だからコウちんのおかげで、私も少しだけ変われたんだよ」

「なら俺も一緒だ。カナに出会ってなかったらいじけたままで、つまらない大学生活になってた」

「ならいい加減信用すべし」

「信用も信頼もしてる。でもアレのせいでどうしても疑心暗鬼になるんだ。情けないことにさ……カナに裏切られたらどうしようって、ほんの数パーセントだけど考えてしまう自分が居るんだ」

「まあ、アレだけ尽くしてきた相手に浮気されたあげく簡単に乗り換えられたら分からなくも無いけど……そもそも大学落ちたのだって、アレが直前に掛かった風邪の看病して自分にうつったせいでしょう」

「まあね。ただあの事は俺も自分なら大丈夫だろうっていう油断があったからさ、全部が全部アレが悪いわけではないかな」

「そこよそこ。コウちん甘やかし過ぎ、人間甘やかし過ぎるととことん増長するものなの。適度な厳しさは必要」

「分かってるって。わざわざそれを戒めるためとかいって、胸糞悪い映画見せられたりもしたからな。でもあんなのは極端なフィクションだろう」

「フィクションだろうが人間を描いているのだから本質はたいして変わらないよ。私だってコウちんに甘やかされ続ければ、コウちんなら何をやっても許してもらえるなんて盛大な勘違いをするかもしれないし。そしたらアレと同じように、平気で浮気するビッチになるかも知れないんだから」

「だからって、付き合う時に浮気したら殺してくれってのは普通ドン引き案件だぞ」

「それくらい言わないと信じてくれなかったでしょう。露骨に浮気現場見せつけられた上に、今までの頑張りを否定され、最後は私に釣り合わないとか一方的に別れを告げられた、ズタボロマインドだったあの時のコウちんには」

「いや、いや、そんな古傷抉らんでもって……まあ、あの頃の俺ならそうだったかもな。あれくらい言ってもらわないと確かに駄目だったかも」

「うんうん。それにその誓いは今も有効。万が一では確率高すぎるから、兆が一私が浮気したら殺して欲しい」

「それだけ聞くと完全にヤンデレだな」

「ヤンでたのはコウちんの方、だから天秤を釣り合わせるため私もヤンじゃう必要があっただけ」

「それってどれだけ俺の事好きなんだよ」

「それは勿論コウちんが浮気したら躊躇なく殺せるくらいに」

「うわー、笑ってそう答えてくれるカナに安心するって俺もヤバいな」

「じゃあヤバい者同士お似合いってことで」

「そうだな今後とも末永く宜しくってことで、これを受け取ってくれ」

「えっ、これって……」

「えっと婚約指輪ってところかな。学生のうちに起業して不安もあったけど、カナの手伝いもあって会社は順調だし、なによりカナの夢を叶えるための手伝いをこれからもしていきたいから」

「……ぐすっ、もうこんなダサいカッコの時に渡さなくても、コウちん空気読めなさすぎたよぉ」

「あっ、やっぱその格好ダサいと思ってたんだ」

「うっ、もうコウちん。そういうとこだよ、人が感動してるのに」

「ごめん、ごめん。でもさ……どんな格好のカナでも好きだから、スッピン、アニメ柄スウェットでも愛してるから」

「もおー、相変わらず素直じゃないんだからコウちんは……でも、ありがとう嬉しいよ。私の方こそ宜しくお願いします」

「うん。そのこれからは綺麗なカナでも信じて安心していられるように努力するよ」

「あはっはっ。なにその綺麗なジャ◯アン見たいな言い方。普段の私は汚いってわけ？」

「えっ、そんなわけないじゃん。それに俺は見た目以上にカナの中身に惚れてるんだから。俺にとっては全てが最高だから」

「うぐっ……もう急に素直になるのズルい。私の方が照れるじゃん」

「いやその照れ顔の方が反則だろう……うん。やっぱりそんな顔みせられたらさ、独占しときたくなっちゃった。だからしばらくは今のままでお願い」

「うっ、まあ別に私は楽だから良いけどさ。それより婚約したなら、なおさらアレの事気を付けたほうが良いかも」

「えっ、もうアレの事はどうでも良くない」

「けれどね。アレの最後の視線が気になって……」

「アレの視線？　一応去り間際にもう二度と話しかけんなって念送っておいたけど」

「たぶん効果無いよそれ。そもそも浮気したくせに何もなかったかのように話し掛けてくる不条理モンスターだよ。会えばまたきっと話し掛けてくるよ」

「うげっ何でだよ。散々こき下ろして捨てた俺になんて今更興味無いはずだろ。今日だってカナのお陰でトラウマ克服してたから普通に話せただけで、カナに会えてなかった頃ならマジで発狂もんだぞ」

「私だってアレの考えなんて理解したくないけど、分かるんだよ、たぶんアレはコウちんの事を狙ってるって」

「はあ。マジで意味わかんねぇ。捨てた男に未練でもあるっての？」

「未練とは違うと思う。たぶんコウちんの見た目で判断したんだよ。金とかステータス目当ての女共と同じ目をしてたからさ。きっと今でもコウちんの物は自分のものとか思ってるんじゃない」

「うわー。それって最悪だな」

「最悪ね」

「とりあえずあの駅周辺はなるべく立ち寄らないようにしよっか。連絡先は変えてあるから知らないだろうし」

「あの時完全に断ち切っておいて正解だったわね」

「ああ、まったくだこれもカナの助言のおかげだな。マジで疫病神なアレと違ってカナは幸運の女神だぜ」

「はいはい。お世辞言ってもキスぐらいしか出ませんよ」

「やった。一番のご褒美じゃん。って冗談はこのくらいにして、とりあえずアレに関してはひたすら回避して一切関わらない方向で」

「了解。それより本当にキスのご褒美は要らないの？」

「まさか、これからご褒美以上のものを美味しく頂くから、その時と合わせて頂くとするさ」

「うっ、お手柔らかにお願いします」

「うんうん。三連休ゆっくりと楽しもうね」

「もう悪い笑顔だよ……でも笑ってくれるようになって本当に良かった」

「……うん。ありがとうカナのお陰様だね。心から愛してるよ」

『ちゅ』

「あっ結局先に頂いちゃった」

「良いよ。コウちんが笑ってくれるならいくらでもキスしてあげるから」

「俺もカナが喜んでくれるなら幾らでも頑張っちゃうよ」

「あーそこだよそこ、そういうところだよコウちん。まったくもう……でも、そう言うところも含めて愛してるよ」

『ちゅ♡』

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読んで頂きありがとうございます。

あえて会話だけでの展開にしてみました。

特に深い意図はありませんが、会話から過去に何があったのか、細かい所は想像していただけると面白いかも？

それで、少しでも楽しんでいただけたら

☆☆☆評価を頂けると泣いて喜びます。

♡での応援もすごく嬉しいです。

　

もちろん率直な評価として☆でも☆☆でも構いませんので宜しくお願いします。