絶対禁止!! ~依頼人に恋しちゃいけませんっ!~
西出あや
プロローグ
わたしの身長の三倍はありそうな高い高い塀。
重厚な造りの校門は、登下校時のみ開放され、その脇には警備員の詰め所まである。
さすが、由緒正しい家柄の子の通う学園なだけあって、警備体制は万全だ。
っていうか、ここまで万全だったら、そもそもわたしがここにいる必要なくない?
ここは、私立大御門学園中等部の校門を入ってすぐのところ……にある高い木の上。
そんなところでなにをしているのかっていうと、依頼人の到着待ちだ。
今まで散々修行はしてきたけど、実は、今回がわたしの初任務なの!
わたしの生まれた望月家は忍びの末裔で、今は要人警護……つまりボディガードを生業としている。数年前の要人暗殺事件以降、特にその需要は高まっていて、常に人が出払っている状態が続いているんだ。
それで、今日から中学生になるわたし・
依頼人は、わたしと同い年の
幼い頃から誘拐されそうになったり、命を狙われたりを繰り返していて、初等部の頃はほとんど学校にも通えてなかったみたい。
依頼人の第一印象は、簡単に言うとクール系イケメン。
写真なのにキラキラオーラがまぶしすぎて、こんな男子が同じクラスにいたら、きっと女子にキャーキャー騒がれまくるんだろうなー、なんて思わず想像しちゃったくらい。
ま、依頼人がイケメンかどうかなんて、わたしには関係ないんだけどね。
だって、我が望月家には、依頼人との恋愛は厳禁っていう鉄の掟があるんだから。
それ以前に、長所は人並外れた運動神経! 見た目は中の中、色気に関しては皆無のわたしでは、女子として認識してもらえるかどうかすら怪しいよ。
依頼人は、ボディガードの運転する車で学校まで来ることになっている。
そろそろ来てもおかしくない時間なんだけど……あっ、あれかも!
遠くに小さく見えてきた黒塗りのいかにも高級そうな車が、そのまま学校前に乗り着けられた。
一気に緊張が高まり、心拍数があがる。
絶対に失敗は許されない。
完璧に初任務をこなして、お兄ちゃんに一人前だって認めてもらうんだから。
後部座席のドアが開き、長身の男子が校門前に降り立った瞬間、「「「きゃーっ!」」」という女子の悲鳴があたりに響く。
サラサラの黒髪に、しゅっとした切れ長の目。目鼻立ちの整った顔立ちの彼は、周囲を歩く女子の目を一瞬にして惹きつける圧倒的なオーラを放っている。
うん、彼に間違いない。
それじゃあ、こっそりあとをつけましょうか……と思ったそのとき。
猛スピードで坂を下ってくる一台の乗用車が目に入った。
あんなにスピードを出して、大丈夫——なわけないでしょ!
危険を察知し、木の上から大きくジャンプすると、彼の傍らに降り立ち、驚きで目を見開いた彼を思いっきり突き飛ばす——と同時に、停車中の車に突っ込んでくる暴走車。
ヤバいヤバいヤバいヤバい。
こんな初任務ってアリ~~⁉
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