ゴミ統一党

蓮村 遼

私が変えてみせる!

「なんで分別に差があるわけぇ!!」


芥浄美ごみきよみは自分の住まう自治体のごみの出し方ガイドブックを手に、電話口でワナワナと震えていた。本日は火曜日、燃えるごみの日だ。




浄美は先日この町に越してきたばかり。荷ほどきをし、整理整頓し、自分の城を作り上げる。その際に出たごみをまとめ、本日出そうというところだ。

(あ、一応ごみの出し方確認するかー。持って行ってくれないのやだし。)

ガイドブックに目を通した浄美は目をこれでもかをかっぴらいた。

「!!なんだと!パンの袋も、ビニール紐も燃えるごみに出せないだと!?あ゛!生ごみって専用の袋あるの?しかも乾燥させて…出せ?!」


そこにはずらりと、事細かに分別の仕方が記してあったが、どれも浄美には知見の無いものばかりであった。そして、浄美の横には、燃えるごみとして出せないものが半分ほどを占めた町指定のごみ袋が座っていた。



これを、また分別…し直すの?



「…だ、だいたい!なんでこの町はこんなに面倒なの?くそっ!問い合わせてやる…!」

浄美はスマートフォンを即座に開き、町役場にと問い合わせようとした。

「まだ営業時間前やないかい!」

浄美は今のところは大人しく、分別をし直した。






職員の対応はシンプルで反論を受け付けなかった。

「ここは利用している焼却炉が古く火力が出ないため、燃やせるものは限られています。また、昨今は環境にやさしく発電を実施するため、生ごみを発酵させガスを再利用しています。そのため生ごみはかならず別にしてください。」

では…、と職員は早々に受話器を置こうとしたため、浄美は慌てて続けた。

「ちょ、ちょっと待って!もう一つ聞いていい?最近多い、飲み口がプラスチックで、容器が紙パックのやつ!あれは牛乳とかと一緒でいいんだよね?」

「それは別々に切り取ってください。環境にやさしく、口はプラスチックの資源ごみ、パックは紙の資源ごみです。牛乳パックは別です。では、何かありましたらまたお電話ください。ご利用ありがとうございました。」

無愛想に電話は切れた。



冒頭に戻る。

「どうしてこんなに分別の基準が違うわけ…?やたら厳しいところもあるし、緩いところもあるし。焼却炉が古い?知らねえよ!ごみは全国一律なんだから、焼却炉も統一しろ!しかも何が『環境にやさしく』だ!こんなちっちぇ町一つで気を付けたって、他が全部燃やしてたら環境もくそもないだろ!!何がリサイクルだ、SDGsだ!!なんで皆平気なの!ああー、イライラする!」


浄美はガイドブックをテーブルに叩きつける。

『郷に入れば郷に従え』。その通りだ。その町のゴミ出しに従えばよい。しかし、こんなにごみの分別に差があって良いものか。



「…えてやる。」

浄美のこぶしに力が入る。ガイドブックが音を立ててひしゃげる。

「変えてやる…。私が変えてやる!このめんどくさい、全国のごみの分別を統一してやる!」



続きません。

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