第15話 湯船はひとりで浸かるべき
週末に僕たちの街に訪れた豪雨は激しく地面に水を打ちつけていた。正面玄関では傘を忘れた愚者がカバンを傘代わりにして走っている。今日の朝ほぼ全ての番組で午後は豪雨になると予報がされていたのに持ってこないやつなんているのだろうか。
そう、僕である。
今日は朝寝坊してしまってテレビなんて見てる暇なかったのだ。そして僕の家は学校から少し遠いので濡れることを覚悟しなければならない。本当に憂鬱である。
「玲央〜帰ろ〜」
「...こなつ。傘入れさせてくれない?」
「えっ?相合傘のお誘い!?
これってあれでしょ?傘もってるけどあえてないふりして好きな子の傘の中に入れさせてもらって一緒に帰るっていうラブコメの定番!」
「傘はほんとにないんだよ」
「それはどうかなぁ?」
「とにかく入れさせて!」
「わかったよ。冗談だって」
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「そいえば相合傘って別れた後傘持ってない側はひとりで雨に濡れながら帰ることになるんだよね」
「それな なんか可哀想」
いつもの雑談で僕達は帰路に着いた。
しばらく歩くとこなつの家が見えてくる。
「...濡れて帰るかぁ」
「もしよかったらさ!...雨宿りしてく?」
「...じゃあしようかな」
こなつの家に入るのは初めてだった。一緒に帰っていたので外装は何度も見ているが
玄関の靴はしっかり並べられて整列しており塵一つ無い。モデルルームだろうか
僕も部屋綺麗にしないとなぁ……
「ちょっとまってて〜タオル持ってくる!」
「うん。ありがとう」
傘はさしていたが相合傘なのでまあまあ肩が濡れてしまった。要所要所を拭きこなつの家に初めて足を踏み入れる。
「お邪魔します」
「はーい」
............何をすればいいんだ?
ソファに座る?...いや今は濡れてるし
テレビをつける?...流石にマナーがないやつみたいに思われるし
「玲央服脱いで」
「......え?」
「だから、服脱いで」
彼女は何を言っているんだ?人前では服を着るものだろ
「なんで?」
「濡れてるから。風邪ひいちゃうよ?」
「あぁ.........理解」
まったく...ちゃんと言わないと僕は分からないぞ
僕はこなつがいる脱衣所に向かった。
「じゃあこっちで洗っとくね」
「家庭的だなぁ」
「まあね。うち親帰ってくるの遅いから」
「それ『うち今日親いないんだ』ってやつ?」
「まぁ......そうね。」
おいおいおいおいおいおい
それって...おいおいおいおいおいおい 完全に誘ってるじゃないか!!
「ほら 風邪ひいちゃうよ?お風呂入んな」
「は?待てよ!」
「私出て行ってあげるからさっさと入ってね〜」
「ちょっ.........えぇ?」
まぁいい。ちょうどやる事がなくて困っていたところだ。僕は服を脱ぎお風呂場に入る。
「ここで...いつもこなつはシャワー浴びてるんだよな」...いや何を言っているんだ?僕は
これじゃまるで変態じゃないか 落ち着け...落ち着け...
お湯で全身を洗い湯船浸かる。なんとも素晴らしい瞬間である。全身が温まり疲れが取れていくのを感じた。
「入るね」
それはあまりに唐突で予想外の出来事だった。
一応ここで弁明しておくが彼女はバスタオルを巻いていたので...その......見ることはできなかった。
それでも僕には刺激が強すぎる。後ろを向き見てないフリをしているが普通にガン見していた。
「ふぅぅ.........玲央もう少し端寄ってくれない?」
こいつ入るつもりか
「わかった」
彼女は端につめろと言ったのに僕の胸に背中を預けるような形で入ってきた。一瞬にして思考回路がパンクする。目の前にあるのはこなつの頭といい匂いだけだった。というか僕だけ裸なのは不公平だ。こなつもそのバスタオルを取れ
「...狭いな」
こいつ!!
その一言を発したこなつは体の向きを変え僕の向き合った。
「でも...好き」
僕の額に柔らかいものが触れる。
...まあこの時は目の前に突如出現した2つの富士山に目を奪われていてそれどころではなかったが
「こなつ!?」
「たまには...こういうのもいいかなって」
勘弁して欲しいものである
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