　あまり良い出会い方ではなかったのを覚えている。

「声かけてくれるのはうれしいんですけれど、わたしにかまわないでください」

　君は覚えているかな？　初めて声をかけた時だった。

　そういって自虐的に、でも寂しそうに笑っていたよね。

　まぁ私はその言葉に普通に傷ついた。はっきり拒絶されたのがわかったし。

「才能の前には勝てるわけないんです。努力なんて無意味なんです」

　それは君がにっこりと笑いながら言った言葉。

　なんでそんな風に言うのか、私には理解できなかった。

　だって私から見れば、君こそが才能あふれる存在だったんだから。

　だからかな？　ますます君のことが、君の存在が気になっていたんだ。

「いつもいつも妹と比較されて、才能がなくてかわいそう、残念って、そういう哀れんだ視線を向けられるの、もううんざりなんです」

　あれは何度目だったかな？

　しつこかった私に、君は怒らず本当の気持ちを話してくれた。

　あまりに私は無神経だった。

　君の痛みにまるで気づいてなかったのを知った。

　でも。それでも。

　私は想像する。ずっと誰かと比較されてきた痛みを。

　もちろん人の痛みなんて完全には分からないし、わかるはずもない。

　その痛みは君だけのものだ。

　それでも私は君にちゃんと伝えたいと思う。

　君には素晴らしい才能がちゃんとあるってことを。

　みんなが持っていない君だけの素質がちゃんとあるってことを。

　たぶん君にとって僕は無神経でおせっかいな奴と認定されているだろう。

　でもそれでいい。その無神経でおせっかいなところが私の才能なのだ。

　君の苦悩と私のおせっかい、その交錯が縁の始まりだった。

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