鋼鉄R~霊祓い師大道寺林太郎 人材教育課襲来編~
大谷智和
1
要は屋上から大道寺の様子を眺めていた。隣には翼を生やした女が寄りかかっている。
「・・・あの女の情報は入ってないけど、協力者なら始末するしかないか」
要はそのまま彼らの前に飛び降りた。こういう訓練は前職で慣れている。着地と同時に周囲に地響きが起こり、大道寺の後ろにいた実働課の人間たちは怯んだ。立ち上がると要は大道寺に問いかけた。
「・・・大道寺林太郎、31歳、だな?」
「年齢まで知っているなら一々聞いてくるなよ。どこの所属だ?」
大道寺は首にかけられたネームプレートを確認する。
「要英二、所属は・・・人材教育課だと?」
そして要はサバイバルナイフを取り出して臨戦態勢をとった。
「大道寺、北海道支部からの命令だ。貴様は我々が抹殺する」
だが大道寺は動じる様子を見せない。いづれ自分たちが動くことをある程度覚悟していたのだろうか。
「要・・・俺がいた時にはそんな名前見なかったが、新入りか?」
大道寺の言動は少し意外だった。だが要としても隙を見せるわけにいかない。
「4年前中途で入った。人事部からのヘッドハンティングって奴だな」
「へえ、するってえと随分な前職だったみたいだな」
「当然だ。俺は元空挺団だからな」
その言葉を聞いて大道寺は一瞬眉をひそめた。
陸上自衛隊第一空挺団、陸上自衛隊において唯一の落下傘部隊である。選び抜かれた精鋭のみが在籍しており、数々の災害派遣で活躍してきた部隊だ。当然普段の訓練もかなり厳しい内容の為、大道寺も冷や汗をかくほどである。
「あの一番狂ってるっていうところの人間か」
「ふっ、ネットの与太話を聞きすぎて浮足立っているな」
そう言うと要は地面を蹴り、一気に大道寺との間合いを詰めた。あまりの速度に大道寺も受け身の姿勢をとるのに若干遅れた。要は大道寺の腹部に拳を入れ、大道寺はそれをもろに食らってしまう。間髪入れずに要はナイフを彼の額に向けて振り下ろす。だが大道寺はそれを受け止めた。
「随分なご挨拶だな、元自衛官殿」
「おあいにく様、元日霊連主任殿」
大道寺は右足でローキックを放ち、足元を崩そうとした。だが要もそれを察知したのか、瞬時に左足を上げ、そのまま横っ腹に蹴りを入れた。地面に倒れた大道寺に今度は踵落としを繰り出すが大道寺はそれを躱して立ち上がり、左腕でフックを繰り出した。だがそれも読まれたのか、またしても攻撃を受けられてしまう。
「思考が短絡的だな」
上坂達が大道寺に追いついたタイミングで謎の男が棟の上から着地してきた。遠かったので誰かは判別できなかったが首からネームプレートを下げているので少なくとも敵ではなさそうだと本能的に察知した。
「八田課長、あの人って」
その姿に八田も見覚えはある様子だ。
「お前、研修の時人材教育課の人に会わなかったのか?」
「人材教育課・・・ああ、村田課長代理なら」
「そうか、いい機会だから見ておくんだな。うちの人材教育課がどういった部署なのかを」
要が大道寺を抑え込んでいると丁度七尾と目が合った。
「七尾さんじゃないですか。せっかくの所申し訳ないがここはお引き取り頂けますか?」
その言葉に七尾も反応した。
「加勢は必要ないのか?」
「大勢いるとかえって足手纏いだ。後始末ならこいつをやった後に第三実働課を呼ぶんでご心配なく」
要は七尾に対して不遜な態度で返した。七尾もその言葉に激昂するかと思いきや意外な返答をした。
「仕方ない。引くぞみんな!」
彼がそう言うと全員何も言わず社用車へ向かっていった。上坂も彼の対応に疑問を持ちながらも彼らに従った。
「・・・あの七尾課長にあんな態度とるなんて・・・どういう部署なんだよ」
上坂は心の中でそうつぶやいた。
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