(二)

「このコスプレ男、誰やッ⁉」

 念の為、ウチの会社と昔から付き合いが有る、そっちの稼業の人に、あの馬鹿タレの身辺調査を依頼した。

 危ない橋やが……人1人殺されとるかも知れんと思うと、流石に……。

 いや、ホンマに殺されとっても警察に通報する訳にはいかんが……。

 ところが、その結果、依頼した相手が持って来たんが、世にもケッタイな写真。

「東京の新宿で、未成年ガキ売春ウリをやらせとる半グレだそうで……」

「東京の田舎者いなかもんが、どうしたんやッ?」

「そいつが、少し前から、例の漫画家センセの仕事場に出入りしとるようです」

「何で、そんなんが、大阪にるんやッ?関東ローカルのチンピラやろ?」

「何か、こいつ……SNSでは有名人みたいでして……例の漫画家センセともSNSで知り合ったらしくて……」

「何で、マズい仕事シノギしとる奴が、SNSにアカウント持っとんのやッ⁉」

「ちょっと、最近の半グレは……何といいますか……」

「おい、まさか、単純に阿呆ちゅ〜事か?」

「端的に言えば……」

「この馬鹿、こっちで殺しとかやっとらんやろな?」

「何で、御存知なんですか?」

「おい、待て、誰を殺したんやッ⁉」

判りません」

「『もう』?『もう』って何や?」

「ウチの業界で葬除そうじ屋って呼ばれとる連中に仕事を依頼しまして……」

「掃除?」

「いえ……まぁ、漢字で書くと少し違いますが、似たようなモノですが……その……」

「おい、まさか、殺しか?殺し屋なんてホンマにったんか?」

「いえ、自分で殺した相手の死体の始末です」

「待ってくれ、それでも、十分に無茶苦茶やろ……」

「はい……それも……も……。あ……1件だけは、葬除そうじ屋の奴らが死体の顔に見覚えが有ったみたいで……ええっと……どうも殺されたんは警察官デコスケらしいんですが……」

「無茶苦茶過ぎやッ‼無茶苦茶オブ無茶苦茶やッ‼」

「い……いや……その……もっと無茶苦茶な事が……」

「これ以上、どんな無茶苦茶な事が有るんやッ⁉」

「殺した当人が……自分が殺した相手が警察官デコスケやと気付いてないフシが有るみたいで……」

 たすけてくれ……。

 だれか……たすけて……。

 座っとるのに立ち眩みがしてきた……。

 人殺すんなら……せめて、ちゃんと考えて殺してくれ……。

「で……そのコスプレしとる馬鹿タレは、今……?」

「ですから……もう、何も情報引き出せません」

「はっ?」

葬除そうじ屋への金の支払いが遅れて、葬除そうじ屋に始末されたみたいです」

 あいつには……こっちの思う通りに破滅してもらわにゃアカン。

 その為には、あいつが勝手に自滅すんのを、俺が、わざわざ、防いでやる必要が有る。

 ……でも……。

 何でやッ‼

 何で、あの阿呆は、ここまで考え無しの阿呆なんやッ⁉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

祟り屋・大阪難波店 @HasumiChouji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ