満員バス

林風(@hayashifu)🫠

満員バス

父の施設の帰りに、バスに乗った。

うまいこと座るところがあったので、ちょこんとぼくは、座った。

次の駅で、二人連れのサラリーマンがやって来た。なぜか、二人は、ぼくの横に立って、しゃべりはじめた。四十代くらいの二人だろうか。脂の乗り切っている二人で、きっと、仕事の知識も、ぼくには想像を絶するんだろう。

二人は、饒舌に話しはじめた。話の内容は、ふざけた内容で、どうでもいいような話だ。

だが、ぼくは、読書をしようと思っていたので、その饒舌なしゃべり方が、ひどく、耳に障る。読書をやめて、イヤホンで音楽を聞き始めた。

ったく。

なんで、ぼくの横に立つんだよ、この二人。

立つところなら、他にもそこらじゅう空いているじゃないか。

そこらへんで、不愉快な気持ちになる。


しばらくして、二人は、降りたが、それと入れ違いに、急に混みはじめた。気が付くと、満員バスになっていて、後ろ向きに女性が、背を向けて、ぼくの横に立っている。

イヤホンをはずして、音楽を聴くのをやめた。

なんだ?

このひと。

ちゃんと、窓側向けよ。

ぼくが、気に入らないのか??

別にいいけど。

と思ったが、その女性の持っていたハンドバッグが、ぼくの前に半分はみ出していて、ぼくの前をなにかと、遮る。

女性は、後ろを向いているから、そのことに気付かないでいるのだろう。

満員バス。

バスは揺れて揺られて、ハンドバッグも、ぼくの前をゆらゆら、揺れる。

なんだー?このハンドバッグ!!

このハンドバッグ!!なんだー?

うっとしいなあ!!

だいたい、このひと、なんで後ろ向きなんだ!!

窓ぎわに向いていたら、きっと、そのことに気付いて、女性も、すみませんの一言くらい言えるだろう?

変に、反対側なんて、向くなよ!

ぼくは、ますます、不愉快になる。


しばらくして、その女性は降りてったが、バスは、いよいよ、前にも増して、混み始めた。

おばさんたちが、乗り始めて、いや〜、こんな混むん、はじめてやな〜、あんたここ持ち〜な〜、と言って、おばさんの一人が、ぼくの一つ前の席のバーを持つ。

めちゃくちゃ、混み出した。


ああ〜、座ってて良かった〜、絶対、こんな混み合ったなか、立つものか!!

と、バスは、どんどん、前にすすむ。


ふと、二列前の、席に座っている、眼鏡をかけた男が、後ろをなんべんも、振り向いている。あんまり、振り向くので、じーっと見ていると、そのひとと、目が合い、目をそらした。

すると、その男は、急に立ち始め、満員中のなか、後ろの座席へ向かいはじめた。な、なんだ??

この満員バスのなか??


そのひとは、「よ〜〜!!久ぶり〜〜!!」と、どこかの男と、べちゃくちゃ、大きな声で話しはじめた。


ったく!!

この満員バスのなか、みんな、苛立っているのに、うるさいんだよ!!


ぼくは、不快指数が100になる!


 しばらく、バスは、その二人の話し声でいっぱいになり、周りのひとも、きょろきょろ、その二人を見るが、二人は、なにも気にせず、しゃべり続けている。


うっせ〜な〜。




やっとこさ!もうすぐ、降りる場所だ!


でも、相変わらず、ひとは混み合っていた。


 降車ボタンを押し、「す、すみません、あたたたたた!」という白こい、声を上げ立ち上がった。このバス、最後の最後まで、こんな混んでるつもりなのか?ぼくには、嫌味にしか思えない。


押しのけ、押しのけ、前へすすもうとしていると、なんか、柔らかい生々しいものを踏んだ。


「痛たーー!」


誰かが叫んだ。


足を踏んでしまったようだ。「す、すみません、すみません」


あ、もうすぐ、降りられる!ぼくは、もう、そのことしか考えてない。バス停で止まった。プシューッ!とドアが開いた!


二百三十円。現金で払い、この地獄から逃れることができた。


ふーーっ!やっと、新鮮な空気を吸えた!


バスは、まだ走り続ける。


まるで、嵐が去った後のようだ。


バスを降りたその先の、床屋の前。静まり返った街なかを、らんらん♪   を歌を歌いながら帰って行った!


バスは、尚も、重い荷物を運ぶかのように走って行く。


あ!そう言えば、買って、中で飲もうと思ってた綾鷹のお茶を忘れてきた。

あ〜〜〜。せっかく、ぐしゃぐしゃのバスから、降りれたのに〜〜


百八十円、自販機で買った綾鷹。飲むのも忘れるくらい、うっとおしかった。


もう、いいや。

あんなバス、もどりたくねえ。


バカヤロー。小さくつぶやき、


車道に唾を吐きかけた。

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