第49話 強者の余裕
その言葉が何を意味するかは分からなかったが、彼女が俺に対して嫌悪感を抱いている様子ではないことだけはわかった。
そして、俺の傍にいたサンゴとホロが、なぜか俺との距離を詰めたかと思うと、まるで俺をかばうかのように前に立ちはだかった。
「おい、どうした二人とも」
「どうしたもこうしたもありませんジュジュ様、今すぐにでもあの女を張り倒して見せます」
「ジュジュさんは、渡しません」
その言葉にサッサ・ロンドは嬉しそうに笑って見せた。
「はははっ、お前たちもその男に惚れているのか?」
サッサロンドの言葉に、ホロは即座に「はい」と返事をし、サンゴはどこか戸惑った様子で何も言わずにただ身構えていた。
「いいぜ、余興は嫌いじゃない、せっかく宴の用意もしていたんだ、今日はパーッと無礼講パーティと行こうじゃないかっ」
随分と乗り気なサッサ・ロンドとは裏腹に、側近のクロイワや背後に控える手下達は怖い顔をしながら俺たちを睨みつけていた。
その温度差は明白であり、この状況がパーティになりえ層には到底思えなかった。
そんな状況の中、サンゴとホロは完全に臨戦態勢でありやる気に満ち溢れていた。
二人から感じる強い魂の共鳴はこの数時間でもかなり進んでおり、それが彼女たちの自信につながっているように思えた。
「それにしてもジュジュ、そいつらを止めなくていいのか?」
「止める?」
「お前の事を大切に思ってくれているこの愛らしい生物を本当に余興に使うつもりか?」
「二人がそうしたいと言っている、止める理由はない」
「そうか、つくづくいい男だな・・・・・・さてっ」
サッサ・ロンドは立ち上がると、一気にその体からあふれる威圧感で部屋中が緊迫感に包まれた。
それはまさしく魔法大学におけるトップの風格であり、肌がピリピリとひりつく感覚と共に、嫌な胸騒ぎも感じ取れた。
しかも、ホロに関していえば一度敗北して目までを奪われた相手、その相手に果たして二人は真っ向から立ち向かえるのだろうか?
「二人とも、本当にやるんだな」
「「はいっ」」
サンゴとホロは二人仲良く返事して見せると、彼女たちは互いに顔を見合わせた後、まるで反発しあうかのように顔を背けあった。
仲が良いのか悪いのか、どちらでも構わないが、やる気だけはある様子の二人はサッサ・ロンドの元へと一歩踏み出した。
「勇ましいものだな、俺に目を取られたはずの女が再び目を取り戻して現れた。まるで夢に出てくる死人だ」
「私は生きてお前の目の前にいる、覚悟してくださいサッサ・ロンド」
「焦るな、しょせんは余興だ、せいぜいこの場を盛り上げてくれよ」
そして、戦いの始まりを告げたのはホロだった。彼女は突如としてその体から赤い閃光を放ち、それはサッサ・ロンドにめがけて放たれた。
しかし、サッサ・ロンドは難なくその攻撃を避けてみせた。その表情は笑顔で笑い声すら聞こえた。
そして、避けた先にある壁は赤い閃光によって風穴があけられており、その破壊力が見て取れた。
なにより、その攻撃が邪神の墓にある巨石の核が仕掛けてきた攻撃と瓜二つであり、俺が授けた力をホロがちゃんと使いこなしている様子だった。
「おいおい、折角邪悪な目をとってやったというのに、今度は凶悪な目を手に入れたもんだなぁ」
「手加減はしませんっ、余裕ぶっていると痛い目にあいますよっ」
「はははっ、やってみろ化け物、少し遊んだらまたその目をえぐってやるからな」
「くっ、このぉっ」
ホロは、すっかり怒りに任せた様子でサッサ・ロンドへの攻撃の手を強め始めた。
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