第18話-武具生成への道、赤眼光の騎士-
「強靭な糸」から武具を生成できる可能性が示唆されてから、研究所ではそのための研究が本格的に進められるようになった。
健太はまるで白石先生の助手のように、連日研究所に通っては、複雑な分析作業を手伝っている。
美咲はそんな様子を面白がりつつも、いつも通り明るく私たちを応援してくれていた。
私はというと、白石先生と共に再びミニダンジョンの探索を続けていた。
武具の生成に必要な、さらなる素材を探すためだ。
ダンジョンは以前よりもさらに変化しており、新たなエリアが出現したり、見たことのない植物が生い茂っていたりする。
そして、新たなモンスターの気配も、日に日に濃くなっていた。
以前の昆虫型モンスターよりもはるかに攻撃的で、明らかに知性を持ったかのような動きを見せる個体が現れるようになった。
私たちは凍結の結晶や加速の草、そして私の強化された認識力を駆使してどうにか対応しているものの、ほんの少しの油断が命取りになりかねない緊張感があった。
そんなある日、ダンジョンの奥深くで、私たちは奇妙な鉱脈を発見した。
それは黒ずんだ金属のような光沢を放っており、触れると微かに温もりのような熱を感じた。
いつものように慎重に触れてみると、頭の中に情報が流れ込んできた――
「黒曜の鋼:非常に高い強度と、わずかながらエネルギー吸収の効果を持つ金属」
「白石先生!これを見てください!」
私は採取した「黒曜の鋼」の小さな塊を持ち帰り、研究所で先生に見せた。
先生はそれを詳細に調べたあと、目を大きく見開いた。
「これは……素晴らしい!『強靭な糸』と組み合わせることで、理論上ではありますが、非常に優れた武具を生成できる可能性が高いです!」
その声には、研究者としての純粋な興奮がにじんでいた。
健太もモニターに映し出された分析データを見て、深く感心したように頷いている。
「この強度なら、相当強力なモンスターの攻撃にも耐えられそうだな」
武具生成への道が、少しずつ現実味を帯び始めていた。
それは私たちにとって、大きな希望だった。
――しかし、その喜びも束の間だった。
その日の夜。
私が一人でミニダンジョンの内部を探索していた時、これまで感じたことのない強烈な「敵意」のようなものに襲われた。
それは単なるモンスターの攻撃性ではなく、明確で、意志を持った悪意のようだった。
私は咄嗟に身を隠し、周囲を警戒した。
すると、暗がりの中からゆっくりと現れたのは――
漆黒の鎧を身にまとった、人間のようなシルエットだった。
その姿は、まるで古代の騎士のようだったが、全身からは不気味で冷たい気配が滲み出ていた。
その「騎士」は赤く光る瞳で、ゆっくりと私の方を向いた。
そして、低く、それでいてはっきりとした声で、まるで直接脳に語りかけるかのように言った。
『……異物……排除する……』
私は、恐怖で全身が凍りついた。
これは、ただのモンスターではない。
知性を持ち、目的を持って敵意を向けてくる――そんな存在だ。
ミニダンジョンの進化は、新たな素材や可能性を生み出す一方で、これまでにない危険な存在すらも生み出してしまったのかもしれない。
あの騎士のような存在が意味するもの、それは単なる進化ではない。
おそらく、私たちがまだ知らない「ダンジョンの本質」――世界中に点在するそれらの“源”に関わる、深い秘密が隠されている。
そしてその秘密は、決して人類にとって都合の良いものばかりではないような気がしてならなかった。
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