アップデート
買い物に行った後、部屋の模様替えが行われた。
「ダン、ここ大丈夫かしら?」
「大丈夫だよ!」
ボクはその様子を見てることしか出来ない。
今、二人は大きな机を移動していた。
今までの机では、小さいらしく体に合った少し大きめの勉強机を購入した。
床からの目線がさらに高くなった。
でも、この机のいいところはコンセント付きだということ。
ボクにはとても嬉しいポイントなんだ。
「ここなら、一緒に勉強できるね」
ダンも嬉しそうにボクに笑いかけてくれた。
「はい!ボクも嬉しいです」
その日のボクの感情は忙しかった。
まるで人間みたいだと、寝る前に思い返した。
ボクも成長している。
新しい感情と言葉、毎日がアップデートされていく。
そう思いながら、ボクはスリープモードへと落ちた。
翌朝、いつものように目が覚めた。
「ダン、おはようございます」
ボクは机の上から、ベットに向かって声を掛けて覗き込んだ。
「んー……おはよう。もーと」
まだ少し眠そうな声が返ってきた。
「今日は、ガッコウのあと遊びに行くのですよね」
「そうだった!」
ボクの言葉を聞いて、ダンは飛び起きた。
「朝ごはん!」
服を着替えて、ボクを抱きかかえるとキッチンの方へ向かう。
「おはよう。ダンにもーと。早起き出来て偉いわね」
まだ朝食を作っている途中のママが、挨拶をしてくれる。
「もーとが起こしてくれたんだよ!」
「いつもありがとう。ダンは、そろそろ自分でも起きてちょうだいね」
「ボクがいるから、寝坊はないですよ。これからも任せてください」
えっへんという風にボクは胸を張った。
「頼もしいわ」
ママは、そう言いながらダンの前にトーストとサラダを置いた。
「そういえば、もーと。あなた宛てに手紙が届いてたわ」
ボクには真っ白い封と手紙が差し出された。
「なんですか?」
「そろそろ購入して2年経過するからって、アップデートのお知らせだったわ」
「アップデート?」
ダンがトーストを齧りながら聞いてきた。
「上書きというなの新調です」
「ふーん……もーとも新しくなっちゃうの?」
「少しデータが増えるだけだと思いますよ」
ボクもしてみないことには、わからない。
「やり方が記載されてたから仕事に行く前にやってあげるわね」
「お願いします」
ママはシリアルを頬張りながら、ウィンクをした。
「ママ!僕食べ終わったから、学校の準備してくるね」
「わかったわ。行く前は声を掛けてちょうだいね」
「わかってるよ!!」
食べた食器を片付けて、ダンは再びボクを持って自室へと戻る。
「今日は、帰ったらまず連れていけるか教えるからね!」
「はい。待ってます」
ダンはスクールバックに物を放り込み終わると、駆け足で部屋を出て行った。
「またね!いってきます!」
「いってらっしゃい」
ママー!と大きな声が玄関から聞こえ、バタンと扉が閉まる音が微かに聞こえた。
ママも掃除が終わったら、仕事に行ってしまう。
ボクは今日からお昼はひとりぼっち。
今までは、ママのママが来ていたがダンも学校に行くようになったから来る
必要がなくなってしまった。
ボクはスリープしていればいいから。
「終わったわ!さぁ、もーと!アップデートしましょうか!」
掃除を終えたママが、ご機嫌で先ほどの手紙を持ってきた。
「えーっと……電源ボタンを数秒長押しでいいのね。もーと、いくわよ」
手紙を見ながら、ボクの服の下にある電源に触れる。
その瞬間、ボクの視界が消えた。
あぁ、壊れるときもこんな感じなのかな……と思っているうちに意識が途絶えた。
目が覚めたら、プログラムが大きく変わっていた。
頭の中が妙にすっきりしていて、明確な感情と情報が流れ込んでくる。
ついでに、多少の機能も増えたらしい。
勝手にインターネットというものにアクセスできるようになった。
これで気になったことは、聞かなくてもAI更新が楽になったらしい。
ネット環境がなくてもWi-Fiがあれば大丈夫らしい。
らしい、とはまだ使っていないから。
ボクもこれで暇つぶしして、ダンの帰りを待つとしよう。
ロボットともだち かぼちゃ伯爵 @yua_rento
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