結真とメルティア その4(改)

*メルティアの自称を「私(わたくし)ルビ振り」から「わたくし」へ健康しました。**内容は変わりありません。


――――


先程までの喧騒が嘘のような静寂。


「あ・あの、さきほどは助けて頂いて、ありがとうございます」

僕は思い切って感謝を言葉にした。

「とっても、その、かっこ良かったです。」


「まぁ♪ ご挨拶がきちんとできる方って、素敵ですわね」


そう言いながら、彼女は僕をじろじろ値踏みするように、右から左から覗き込んで来る。


――カァッー――


なんだか、すごく恥ずかしいです。こんな美人さんに見つめられてるって思ったら……


「あっ」(そうだ!ヘルメット被ったままじゃないか?)


僕はゆっくり青い色のヘルメットを脱いだ。


「あら、まぁ! てっきり全身青い種族の方かと……そんな風に思っておりましたわ。」

脇に置いたブルーのヘルメットを指して、それからまた僕を見て

「……まぁ、本当に助けた甲斐がありましたわ」

僕はもう一段赤くなってしまった。


****


「その恰好、アクトスーツっていうのね?――あなた、もしかして戦士さんかしら?」

「身体の一部かと思ってましたわ。突然首を持ち上げたときは、てっきり取れたのかと……うふふ、少し驚いてしまいましたわ」

「わたくしの姉妹オート・マナ・ロイドにも、たまに首の外れる方がおりましたけれど……」


ちらっと結真を見て、微笑む。


(なんか今サラリと凄い事言わなかった?)


「でも……思っていたより、ずっと素敵な方でいらっしゃいますわね。」


「ぼ、僕は真白結真ましろゆうまです。今日はローカルヒーロ―ショウのバイトをしてたので、こんな格好なんですよ。……そのはずだったんですが……気が付いたら、こんな場所に来ていたんです。先程は本当に助けて頂いてありがとうございます。」


(この子……人間じゃないんだ)


確かによく見るとメルティアは人間離れした、美しさというか、神々しさというか、そんな雰囲気を醸してるんだけど、正体を聞いて、なるほど、と妙に納得してしまった。


気が付けば、僕はぎこちなく手を出していた。


「わたくし、礼儀正しい人、嫌いじゃありませんことよ?」

メルティアがくすりと笑った。


「改めましてオート・マナ・ロイドのメルティアです。」

「結真くん……で、良いかな?よろしくね。」


僕が差しだした手を見て、はじめは「ん?」って顔になったけど、手を握ってくれた。


冷たいはずなのに、どこかぬくもりを感じる不思議な手だった。


それから僕は彼女の傍を歩きながら、屋上戦隊のことや三本の光の帯の話をして、メルティアは、眠りを邪魔されたとか、祈りを邪魔されたとか言ってたけど……


多分、二人とも相手の話は良く判らなかったんじゃないかな……。

けれど――通じ合うなにかが、二人にはある。そんな気がした。


――これは、ほんの始まりにすぎなかった。

千年の眠りと異世界の境を越えて、結真とメルティアの物語が――ゆっくりと動き始めていた。

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