剣
現実の中世西洋では、剣に大きな呼び方の違いはなく、長い物も短い物も全て『剣』と呼んでいたようですが、描写や構え方に違いが出ますので作中では『長剣』や『刺突剣』と呼んでいます。作品や時代によってそれぞれ長さや形が違ったりはします。
長剣(ロングソード)
『かみさまなんてことを』や『堕チタ勇者ハ甦ル』でたびたび登場するのが長剣です。刃渡りは2尺(60cm)から3尺(90cm)を超えるものもあり、作品や時代によって違いますが、よく似た刺突剣と違う点は柄(グリップ)の部分ですね。両手で握るに十分な長さがあり、重量のバランスを取るための重い柄頭(ポメル)の存在が特徴です。
鍔(ガード)は基本的にしっかりとした十字です。鍔が十字のため、相手の重い一撃でも受け止めやすい代わりに、正中に沿って構えることができません。剣道のように正眼で構えるには向いていません。『かみさまなんてことを』のアオは剣道を習っていましたが、長剣を使わずエルフの刀剣を使っているのはそういう理由です。
戦い方は、リーチを活かした刺突が主になります。『かみさまなんてことを』の長剣は鎧と共に発達した武器ですので、切断よりも刺突に向いています。重量があるため払いで押し負けることが少なく、先端が急所へ届きやすいです。
鎧同士の戦いの場合は、相手の刃を盾や鎧の頑丈な部分で受けつつ、肉薄して鎧の隙間に先端を突き込む戦い方が一般的です。そのため、手は必ず鎖の入った篭手やミトンで覆う必要があり、長剣の刃を持って短槍のように突き込んだり、十字鍔(キヨン)で突いたり、逆さまに持って十字鍔や柄頭で鎧の上から鈍器のように打ち据えたりもします。
『かみさまなんてことを』のアリアのように十字鍔を握り、鞘からの抜き打ちで相手のみぞおちを柄頭で打つみたいな不意打ちもありえます。
〇ポメルでの不意打ち(『かみさまなんてことを』 第一部 第25話 )
https://kakuyomu.jp/works/16818093076215867328/episodes/16818093077568059701
長剣の中でも、魔剣と呼ばれるものは十分な勢いさえあれば鋼を切断する力があります。『王子の私の~』や『堕チタ勇者ハ甦ル』の長剣は、重く、そして長く、鋼のような表皮を持った怪物と殴り合うのが前提で作られています。魔剣は時代的に古い技術であることが多いので、しなやかで折れない鋼を前提としていないことも大きいです。
刺突よりも断ち切りに向いていますので、打撃武器と同じく高い位置での構えが有利となります。盾や鎧での守りが堅いため、肩に担いだ状態からの梃子を使った振り下ろしも強力な一撃となります。
『堕チタ勇者ハ甦ル』で登場したエリンのスコヴヌングやジルコワルのスワルトルが刃渡り3尺の長剣で、正に相手を叩き切る武器でした。『かみさまなんてことを』のキリカデールのスコヴヌングは大きさを自在に変えられます。
〇魔剣vs長剣&鎧通しの二刀流(『堕チタ勇者ハ甦ル』 第48話)
https://kakuyomu.jp/works/16817330664614959159/episodes/16817330667518291453
対して、『かみさまなんてことを』ほど時代が後になると、刺突剣に近いくらいの短めで軽い長剣となります。これは異世界人がやってきて鍛造と鋼を作る技術が進歩したことも理由ですが、人間同士の戦争が少なくなったのもあります。
刺突剣(ショートソード)
『かみさまなんてことを』や『堕チタ勇者ハ甦ル』で刺突剣と呼ばれるのは、柄が片手か、或いは両手でギリギリ握れるくらいの短い物を指します。鍔もコンパクトで護拳になっていることもあり、正中で構えることもできますが、盾が無い場合はリーチを活かすために半身で構えます。
『王子の私の~』の時代に帝国属領で使われていた刺突剣は身幅がある代わりに、刃渡りが2尺に満たないほど(50cmほど)短いのが特徴です。集団戦闘で取りまわしがよく、盾を構えたままでも扱いやすいという利点があります。
〇剣闘士の刺突剣vs曲刀(『王子の私の~』 第29話)
https://kakuyomu.jp/works/16818093085375502102/episodes/16818093086231410925
『堕チタ勇者ハ甦ル』で登場したのは先端が細く根元の身幅が広い、鎧の隙間を突くための2尺ほどの長さの刺突剣です。
〇刺突剣とウォーピックの二刀流の戦士(『堕チタ勇者ハ甦ル』 第32話)
https://kakuyomu.jp/works/16817330664614959159/episodes/16817330666530378538
『かみさまなんてことを』の時代になると、技術の進歩でレイピアと呼ばれる軽くて長めの刺突剣も登場します。長剣と比べると軽いため打ち負けやすく、曲がりやすいため、重心のある刃根を使って巻いたり往なしたりする必要があります。
両手剣(トゥハンドソード)
『堕チタ勇者ハ甦ル』で登場した盾を使わない前提の剣で、3.5尺(1m)を超える刃渡りと長い柄が特徴です。刃根(リカッソ)には刃がついていないことが多く、刃根を持って戦うこともあります。鍔は十字のため、正中に構えることはしません。逆に、長い柄を活かして槍のように突きだしたり、梃子の原理で力を篭めて振り回すことができます。
『かみさまなんてことを』の時代には鎧が十分に発達しているため本来なら対人戦に盾は不要なのですが、怪物相手では盾も必要になることが多いため、両手剣はそれほど流行っていません。
『堕チタ勇者ハ甦ル』のエリンのように豪腕でもない限りは、全身鎧を身に着けて扱う方が良い武器です。
〇両手剣での裸剣術(『堕チタ勇者ハ甦ル』 第34話)
https://kakuyomu.jp/works/16817330664614959159/episodes/16817330666870630234
刀
刀は主にエルフとオーガメイジが使っています。よくある異世界ファンタジーのように東方の謎の国が発祥ではありません。洋物ファンタジーのエルフって割りと東洋人的なイメージがあります。
エルフの刀は先端が鋭く尖った曲刀で、刀剣と表記されます。シミターにいくらか近いかもしれませんが、厳密にはマチェヨフスキ書のファルシオンとフォーシャルのあいの子みたいな刀剣になります。本物の『刀』に比べると頑丈です。
刺突での戦い方が主ですが、こちらも魔剣の場合は鋼を斬り裂けます。『堕ちた聖女は甦る』のラヴィーリアは、エルフの刀が魔剣であることを知らないので盾や鎧相手に苦戦します。
〇エルフの刀剣『長包丁』での戦闘(『堕ちた聖女は甦る』 第13話他)
https://kakuyomu.jp/works/16817330658060844181/episodes/16817330658629895933
エルフの刀剣と異なり、オーガメイジが使う刀は正に『刀』で、丸い鍔があって美しい反りがあります。
刀は洗練された武器です。あらゆる無駄を削ぎ落し、軽くできているため脆いのが特徴です。迂闊に刺突や撫で斬り以外に用いると、容易に刃こぼれし、容易に曲がります。『堕チタ勇者ハ甦ル』でも、オーガメイジは刀ではなく槍で戦っていました。
〇オーガメイジ(『堕チタ勇者ハ甦ル』 第39/40話)
https://kakuyomu.jp/works/16817330664614959159/episodes/16817330667202977633
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