VELKRAN -誰も知らない英雄譚-

Leiren Storathijs

プロローグ

プロローグ:零 選ばれた戦士たち

 世界は、今日も静かに燃えている。

争いの報は、もはや日常の背景音と化し、銃声の向こうに誰が倒れたのか、誰も気に留めない。

 正義の旗は引き裂かれ、信念は泥にまみれ、命の値段すら測れぬ血が、地図の上で静かに拡がっていく。


 そのどこかに、名も知られぬ兵士たちがいた。

 捕虜にされても、国を守るために自害を決める者。

 どれだけ役に立っても、無惨に破壊された者。

 最強と謳われるも、一つの弾丸で消えゆく者。

 知り過ぎた結果、世から消された者。

 平和に必要な犠牲に、巻き込まれた者。

 

 彼らは英雄ではない。歴史に名を刻む者でもない。ただ一つの命令に従い、ただ一つの戦いに身を投じ、そして──静かに、散っていった。


 だが、死は終わりではなかった。


 ――これは、死を超えてなお戦場に生きる、無銘の兵士たちの物語である。

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