私はツーティシューです
うさ田ケリー
ワンティシューで私を受け止められるのか
「お前、いつも絶対2回シュッシュッてするよな」
とダンナが言った
「は?え?何?」
と言いながら私は勢いよく鼻をかんだ
「ティッシュ」
「いつも絶対2枚取るやん」
「ツーティシューやな」
はい?
「じゃあアナタ、鼻かむ時、何ティシューなのさ」
「俺はワンティシューや」
何故か誇らしげだ
何だって?
鼻をかむのにワンティシューだと?
ワンティシューであの鼻から出てくる水を受け止められるのか!?
私は普段あまり鼻はかまない
あまり良くないのはわかっているが、多少の鼻のズルズルなら何とか外に出てこないように中に留めておく
化粧してる時なんかは特に、鼻をかむと見事に化粧がはがれ、少し遠目から見ると昔のコントなどで見た鼻の頭を赤くした酔っ払いのオジサンみたいになるのだ
なので鼻をかむ時はもう、水分大放出なのだ
それをワンティシューで受け止めろと……?
ダンナは更に畳み掛けてくる
「俺の知り合いの奥さんなんか1枚取って、それを更に2枚に分けて使うらしいぞ?」
いやいや、待て待て
0.5ティシュー!?
もし私が0.5ティシューで鼻をかんだとしよう
鼻の水が出る前に鼻息の風圧で木っ端みじんになるのは目に見えている
そうなると水を受け止めるものが手だけになるではないか!
その奥さん、通常の呼吸をするように鼻をかむのか?
ティッシュを添える程度に使う鼻をかむ達人か何かなのか?
「いや、それは無理っしょ……」
何のためのティッシュだよ
どうもダンナは日頃私がツーティシューなのが勿体ないと常々感じていたようだ
この家庭環境のせいで息子までツーティシューになったと言うのだ
ふむ、これが俗に言う『価値観の違い』と言うものか……
一応今後も夫婦関係は穏やかに続けていくつもりなので、ここはひとつ私もワンティシューで頑張ってみるか
が、ワンティシューでやってみたものの、やはり無理だった
結局もうワンティシュー使ってしまった
やはりツーティシューなのだ
ワンティシューでは私を受け止めきれない!
私はエコではないかもしれない
ダンナの知り合いのお宅よりティッシュの減りは早いかもしれない
それでも私はこれからもツーティシューで生きていく!
そう心に決めた、ある初夏の朝であった
《完》
私はツーティシューです うさ田ケリー @shan-naka
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