夢を見る人

名なし葉っぱ

夢を見る人




ベッドに仰向けで眠りながら、

空を飛んでいる夢をみた。


僕は眠っていたが、ベッドは飛んでいた。

なんなら僕はキレイに仰向けになり、布団もしっかりかけ、

まるでベッドと一体になっているかのように見えた。

そう、僕 が 僕の目の前を、ヒューンと飛んで行った。

そんな事があったら、もうビックリするどころか、

気絶してしまうだろう。


現実には起こらないことが、夢では起こってしまう。

そう、それが夢だ。


正確に言えば、眠っている時に見る夢か、

小学生に、夢 と聞くと将来なりたいたいものなどを

言うだろう。

僕は、お昼ご飯を食べながら、そんな事を思っていた。



僕の名前は タケル 、大学2年生である。

よく自分が何かに乗って、空を飛ぶ夢を見る時がある。

今までにだって、何回も空を飛ぶ夢を見たのだ。

昨日はベッド、その前は確か銅像の背中、

ある時なんかは、クジラの上に眠りながら、クジラと一緒に

空を飛んでいた。

多分、眠る前にTVで クジラのドキュメントでも観たのだろう。

とにかく、毎日ではないが、僕はそうやって

夢の中で空を飛んでいた。


今思えば、僕が死んで、僕の魂を運んでいるかのようにも見える。

…と、すると、僕は何回 死んでいるんだ…ゾッとする時がある。


そんな時、友達が僕に話しかけているのに気付いた。


「 おーい? …おーいってば!タケル?聞いてるの?」


隣りを見ると、同じクラスのユミが、少し怒った様子で

こっちを見ていた。

ユミが いつから隣りにいたのか完全に思い出せない僕は、


「 ごめん、聞いてなかった…なんの話?」


と、言ったら、ユミは、


「 まったくもう 、タケルって いつも何か考え事してるか、

人の話聞いてないよね~ 」


と言った、

僕は、


「 ごめんごめん、んで何の話?」


と、もう一度聞いた。

ユミは、


「 だから、私が見た夢の話よ!!」

「あんたがね昨日、ベッドに眠ったまま空を飛んでいたのよ…確かこの近くの川の辺りだったような…」


僕はビックリしてユミを見た!

(は?有り得ない…何で同じタイミングで似た様な夢をみたんだ…しかも…川?三途の川とでも言うのか…)


「ねぇ大丈夫?顔が真っ青よ」

とユミが顔を覗かせた。

僕は

「大丈夫大丈夫!ところで僕が空を飛んでる夢を見るのは初めて?」


ユミは少し考えて

「ん〜…初めて!でもウケるよね、ベッドでヒューンだよ?笑」


僕はもう人の話など耳から入ってこなかった、同じタイミングで似た様な夢を見るなんて、何かがおかしい…これは夢か?現実か?僕は少し頭が混乱しよく分からなくなっていた…


「ごめんユミ!体調悪いから昼から帰るわ!」

僕はユミにそう言い、教室を出た。


僕は大学を後にすると、目の前の物が現実に存在している物なのか、夢のようにぱっと消えてしまうのでは無いのかと思いながら歩いていた。今自分の目の前を何かに乗った自分が飛んでいくのでは無いかとも思った。とにかく早く自分の部屋に帰りたかった。


無事にアパートに帰った僕はカーテンを閉めたままベッドに横になった。


(ん〜…僕は一体何に怯えてるんだ…ユミと同じ夢を見た事か…僕が死んでしまうかもしれないという事か…)

とか考えていたら知らぬ間に眠ってしまっていた。


…夢の中で僕は空を見上げていた…青い空、白い雲、気持ちの良い風だ…気持ちいい風だ…と思っていた時に今自分がいるのでは地上ではない事に気づいた!!

雲の上だ!!僕は雲にのってるんだ!!…

…また僕は空を飛ぶ夢を見てしまっていた…


夢から覚めると夜になっていた、スマートフォンにはユミからのメッセージが届いていた。


「タケル大丈夫?出来る事があったら何でも言ってね」

「そういえば空を飛ぶ夢ってのは…自由への欲求だったり、開放感を求めているみたいよ?性的な欲求不満もあるみたいだけど…笑!とにかくゆっくり休む事ね!」


「ありがとう。大丈夫だよ。」

と僕は返信し、自分の欲求について考えてみた。


僕はストレスを感じていたのか?

何かしらの欲求があったのだろうか?

自由になりたかったのか…


僕はもともと何かにハマったり、何かを求めたりはあまりしない性格だった。

周りの人から見れば面白くない人間に見えただろう…


自由?僕は今不自由に感じているのか?…


もうワケがわからなかった…

僕の自由への欲求の思いがユミの夢に入って行ったのか?

それとも、ユミに対しての性的欲求がありその思いがユミの夢に入って行ったのか…

それとも…ユミが僕に対して性的欲求が…

答えなど出るわけがなかった…


暗い部屋で天井を見ていた。


僕は昔から自分の気持ちを人に話したりした事もなく、そういう事を話し合ったりする友達すらいなかった…


少し悲しい気持ちになった…


僕は薄く見える天井に向かって


「僕はっ!僕は空が飛びたいっ!!自由に飛びたいっ!!」


と無意識の中、叫んでしまっていた。

言葉が聞こえた後に自分でもビックリしたほどだった。




僕は考えた…どうやって空を飛ぼうか…

飛行機やヘリコプターなんてそういうものではないな…

風を感じられるような…

実際にベッドに乗って空を飛びたかった!!


もう少し現実的にいこうと思いスマートフォンを手にとった


ジェットスーツ…?パラグライダー…?

あ!!ハンググライダー!!


前にテレビでも見た事があったし、確か大学にもそういったサークルがあったはず!!明日大学に行ってさっそく行ってみよう!!


その日は空を飛ぶ夢は見なかった。



翌日大学に行き、飛行研究部とかいうサークルの部室をノックしてみた!

誰も出ない…というか人の気配もなかった…

勇気を出してドアノブを回した。

中にはものが散乱していて、もちろん人なんていなかった…

何日も放置されていたのだろう、ホコリやカビの匂いがした。


そんな時後ろから誰かに両肩を掴まれた。


「わーっ!」

「うぁーーー!!」と僕

振り向くとユミがニコニコしながら立っていた。


ユミ「ビックリした?もー学校に来るなら来るで連絡くらいしなさいよね」


僕「ごめんごめん!!」

と言った。


ユミ「何ここ?うわぁ汚いっ!」「散らかっていると言うより廃墟ね」


僕「ユミ!!…僕は空を飛ぶよ!!」


ユミ「はぁ?大丈夫?色々と」


僕「大空を自由に飛んでみたいんだ!!」


僕は初めて自分のやりたい事を人に言った…

少しドキドキしていた…

でもそれよりも空を飛びたかった!!


ユミ「飛ぶのはいいとして、どうやって飛ぶのよ?」


僕「ここは飛行研究部の部室!もう廃部になってるっぽいけど、何か飛ぶ道具かな何かあるはずだ!!」


ユミ「なるほど…じゃあ私も手伝ってあげるわ!!私の夢でも飛んでたしね!!」


僕「ありがとう!じゃあ何か飛べそうなやつ見つけたら言って!!」


ユミ「おっけー!!ベッドはないわよね?笑」


僕「あったらユミがそのベッドで空を飛びなよ!!」



そうして2人はガラクタに埋もれた部屋を探索し始めた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



僕「あっ!!コレだ!コレコレ!」


ユミ「何これ?!」


僕「ハンググライダーさ!!」


ユミ「これ大丈夫!?こんなんで飛べるわけ?」


僕「分からない…とにかく外に出してみよう」


そして、タケルとユミは誰もいない部室から埃にまみれたハンググライダーを外に出した。少し翼の部分の布が色あせていたが、何とか形になった。


「おぉーーーっ!!」


2人が直立でハンググライダーに向かって拍手をしていた。

すると背後から…


「おーい!何だお前達は!」


ビクッ!2人はまるで悪い事をして叱られている子供の様にピクリとも動けなかった。2人が恐る恐る振り返ると、1人の中年の男性が立っていた。


男「ここで何をしているんだい?」


僕「いや…あの…そのですねはい!?」


ユミ「空を飛んでみたいんじゃないの?」


男「何!?空を飛びたいだと?」


僕「はい…で、そこの部室でコレを見つけまして…」


男「……飛ぶか?」

「実は俺は飛行研究部の顧問だったんだ」


僕「いいんですか!?飛びたいです!!」


男「でもまぁ、空を飛ぶって事になると技能書とかいるんだな!!…とりあえずちょっとした広場ででも体験してみるか」


僕「はい!お願いします!」



3人は大学の近くの広い丘のある公園に来た。


男「いいか!怖がるなよ!」


僕「ハイッ!」


ユミ「タケルいっけー」


男「よし!じゃあ軽く走って、イケッ!って合図でさっき教えた体勢になるんだぞ!分かったな?」


僕「むあいっ!!」


ユミ「な、なんて!?」


男「よし!いくぞー!!」



2人の男が広い公園の芝生の坂を走り出した!!

青空と眩しい太陽。

気持ちの良い向かい風が2人に吹いた。


男「今だ!イケッ!」


ユミ「おぉー」


僕「キタキター!!僕飛んで……」


とその時、バキッという音とともにハンググライダーの真ん中のポールが折れた…


ユミ「キャァー」「タケル!?大丈夫!!」


男「大丈夫かーっ!!」



―――――――――――――――――――――





タケルは病院のベッドの上で目を覚ました。

窓際にあるベッドからは青空が見え太陽が眩しかった。

ベッドの下には床があった。

何が起こったのか思い出そうとしていると…


ユミ「おータケル!目覚ましたの?」「良かったぁー」


と言い笑顔を見せた。


僕「ハンググライダーで……俺……飛んでた?」


ユミ「……うん……2秒くらいは……多分…」


僕「……………」


ユミ「あっ、あの顧問の先生がね?申し訳なかったってさっきまでいたんだけど、コレ置いて帰っちゃった笑」

「食べるキュウイ?」


僕「いや…大丈夫」


ユミ「あっ!!こうやって、少し離れて下から見ると…タケル…空を飛んでるみたいだよ笑」


「ベッドで笑」


僕「はぁ?」


ユミ「この部屋7階って事もあるし、窓際で空が広くみえるし!!写真撮ってあげる!!」


パシャ!!


ユミ「見てよこれ!タケルがベッドで空を飛んでるよ?」


僕「…ほんとだ飛んでるみたいだ…」



2人は笑いながらキュウイを食べ、窓から入ってくる気持ちのいい風を感じていた。

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夢を見る人 名なし葉っぱ @happananasi

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