第30話

 そうして邸内を見て回り、日が暮れることに本部へと戻って来た。


「おい」


 本部の廊下を歩いていると聞き知った声が掛かる。


 振り向くとそこには疲労を滲ませたシルヴァン・スタークスの姿があった。


 いつも悪人のような顔だがいつにも増して凶悪な面構えとなっていて、レイスティーはぎょっとする。


「シル!」


 悪人の面構えでも幼馴染の想い人の姿を見止め、ミラは嬉しそうな声を上げる。


「スタークス隊長って呼べ」


 幼馴染二人のお決まりのやり取りを横目に、レイスティーは溜息を着いた。


「スタークス隊長、大丈夫ですか?」


 レイスティーの言葉にシルヴァンは眉根を寄せる。

 かなり疲労の色が濃いようで、悪人味に拍車がかかっている。


 休めていないのか服もくたびれていた。

 無自覚かもしれないが、以前からシルヴァンは疲労が限界に達するとこうしてミラに会いにくるのだ。


 ミラの顔を見て、少しだけじゃれて仕事に戻る。


「大丈夫?」

「ちっとばかり仕事が立て込んでたんだ。気にするな」


 ミラがシルヴァンに心配そうな視線を向けるとシルヴァンは『心配するな』とでも言うように、ミラの頭を撫でる。


 愛おしそうにミラを見つめるシルヴァンを見て、これでどうして二人は付き合っていないのかと首が捥げそうになるくらい疑問だ。


 満足したらしいシルヴァンはミラの頭から手を離し、レイスティーに視線を移す。


「お前、今は寮だったな」

「そうですが」


 それが何か?


「ミラ。お前の家にリアを泊めてやれ」

「え? 別に良いけど」

「いえ、私は寮に……」


 急なシルヴァンの言葉にレイスティーは首を傾げる。


「うるせぇ。一般人のお前に何かあったら面倒なんだよ」


 シルヴァンはそう言い残して踵を返す。


「どうしたんだろうね?」


 ミラも同じように疑問を持っているようだ。


「まぁ、良いか。美味しいお酒あるよ」

「頂きます」


 ミラの言葉に甘えてレイスティーはミラの自宅にお邪魔することにした。

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