第19話
春の花が咲く手入れの行き届いた庭には花の香りで溢れている。
休憩時間になり、庭へ出たフルーラは溜まった鬱憤をぶつけるように花壇に咲いた花をガシガシと踏みつけた。
「何なのよっ! あの女!」
幼い頃から自分は多くを手にしていた。
侯爵家という家柄、愛らしい容姿、異性からも女性からも羨望の眼差しを向けられ、望むものなら何でも勝手に自分の手に落ちてきた。
自分に唯一欠点を付けるなら、それは魔力だ。
治癒術は使えても自分以上の者は大勢いて、このままでは埋もれてしまう。
しかし、それを補うための薬でフルーラは欠点を克服した。
騎士団の一員として医務局に入ったのも所謂世間からのポイント稼ぎだったが、『女神』と呼ばれてチヤホヤされるのは気持ちが良かった。
全ては自分の価値を高めるための手段に過ぎなかったが、思わぬ出来事があった。
それはまさに運命の出会いだった。
国随一の魔法使いと名高いコーネリオは他の男達とは比べ物にならないくらい美しく、超越していた。
誰にでも優しく穏やかで紳士的な彼はフルーラだけにはとびっきり優しかった。
彼も私のことが好きだということはすぐに分かった。
家柄は伯爵家と振るわないけど、国随一の魔法使いであれば私と釣り合うわ。
私と釣り合うのは彼だけ。
このまま互いの距離を縮めればいいだけだったのに、それには目障りな女がいた。
レイスティー・リアは鬱陶しくコーネリオに纏わりつき、彼の優しい振舞いに勘違いし、身の程知らずにも好意を抱いていた。
だけど仕方がないわ。
彼は素敵な人だもの。
それにコーネリオもレイスティーを鬱陶しく感じているのだろう。
紳士的で優しい彼が、彼女にはいつも意地悪を言う。
レイスティーにだけは彼はどこか刺々しい。
でも優しいコーネリオはレイスティーを拒絶できないのだ。
コーネリオのためを思って目障りなレイスティーを騎士団から追い出した。
せっかく、彼のためを思ってしたことだったのに、まさかコーネリオ自身がレイスティーを呼び戻すとは思っていなかった。
「どういうことなのよ」
これじゃまるで、コーネリオの方が執着しているみたいじゃない。
そんな風に思えて不満と苛立ちだけが募っていく。
「消えて貰わなきゃダメね」
追い出すだけじゃ足りなかったのよ。
次はきちんとこの世から決してコーネの未練を断ち切ってもらわなきゃ。
フルーラは口元に不気味な笑みを浮かべて一人呟いた。
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