第25章:「レンの引っ越し」

荷馬車を手配し、植物や食料、装飾品など必要な物資を積み込んだ。東門に着くと、昨日の門番が興味深そうに声をかけてきた。

「やあレン!その荷物で森に何かするつもりか?」

「ああ、屋敷があって引っ越すんだ」笑顔で答えると、門番は驚いたがすぐに理解した様子で頷いた。

「なるほど、昨日の探索はそのためだったのか!良い家になるよう祈ってるぜ」

「ありがとう!」


森道を進むが、荷馬車を引くのに疲れ、途中で休憩することに。すると突然、茂みの物音が。昨日のことを思い出し、剣に手をかけた。一人で来るのは間違いだったか?マヤたちに頼めばよかった……


現れたのは菌獣たちだった。敵ではないことを思い出し、剣を収める。すると驚いたことに、菌獣たちが荷馬車を押し始めた。

「まさか……?」

「手伝ってくれるのか?」

菌獣たちは楽しそうに頷く。

「よし!一緒に屋敷まで行こう!」


◇◇◇


一週間後――マヤとザラの視点


マヤがルミスの東門に向かって歩いていた。

「レン、一週間も連絡なし。別に心配してるわけじゃないが、きっとまたトラブルに巻き込まれてるに違いない。様子を見に行くしかないわ」


門につくと、ザラが門番と話しているのに気づく。

「ザラ!?お前ここで何してる?」

ザラは嫌そうに振り向いた。

「ちっ……邪魔が入ったわね」

「レンに会いに行くのか?」マヤが腕を組む。

「ええ、久しぶりに会いたくなって」ザラはあっさり認めた。「そっちこそ?」


ザラの探るような視線にマヤは顔を赤らめる。

「違うわよ!あのバカが無事か確認するだけ!」

ザラは意味深に微笑んだ。

「そう、そう……」

「もういい!同じ目的地ならさっさと行くわよ!」


二人が出発すると、門番が笑いながら呟いた。

「レンさん、個性的な仲間がいるんだな」


屋敷に着くと、その変貌ぶりに息を飲んだ。手入れされた庭、上品な装飾、全てが清潔で居心地良さそうだった。

「レンが一週間で全部やったの?」ザラが呟く。


何度かノックするが、返事がない。

「いないみたいね。帰りましょう」

すると突然、中からレンの声が。

「今開ける!」

マヤが顔を赤らめると、ザラが優越感に浸った表情を浮かべた。


◇◇◇


レンの視点に戻る


ドアを開けると、そこにはマヤとザラが立っていた。

「マヤ?ザラ?な、なんでここに?」

「一週間連絡がなかったから」ザラが淡々と。

マヤは言葉を詰まらせながら、

「ただ……トラブルに巻き込まれてないか心配で!それだけよ!」


俺は謝罪した。

「改装で忙しかったんだ。完成したら招待するつもりだった」


二人は屋敷を褒めてくれたが、ザラが質問してきた。

「どうやってこんな短期間で?」

「実は……助けがあったんだ。中に入ってよ」


玄関に入ると、まず目に入ったのはプリンの巨大な肖像画だった。二人は驚いた様子。

「こんなに熱心な信者だったのね」マヤが気まずそうに言う。

「特別な……縁があるんだ」ごまかすように答える。


ザラは興味深そうに見つめたが、すぐに案内を続けた。屋敷の中を進むと、至る所で菌獣たちが働いていた。掃除をする者、家具を運ぶ者、裏庭を整備する者――かつてクロタマがいた場所だ。

「こ、これがあの菌獣たち!?」マヤが叫ぶ。

「ああ!彼らは本当に器用なんだ」俺は説明した。「ルミスから家具を運ぶのまで手伝ってくれた」


ザラが興味津々で聞いてきた。

「どうやって意思疎通してるの?」

「それがね――」


バタン!

ノコが天井からマヤに飛び降り、目隠しをした。

「やっほーにゃ!」

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