第23章:「キノコたちの英雄」
マヤとザラと俺が菌獣に構えた瞬間、ノコが両手を広げて飛び出した。
「待つニャ!」
「どうした?」マヤが剣を少し下ろす。
「彼らは襲う気ないニャ」ノコの耳が愉快にピクピクした。
ザラが菌獣を観察すると、彼らは穏やかに揺れていた。
「本当ね……敵意はなさそうだ」
ノコは菌獣に近寄り、優しく撫でた。菌獣は甲高い声で鳴き、ノコと会話しているようだ。
「彼らの言葉がわかるのか?」驚いて聞いた。
「もちろん無理ニャ!」ノコは笑いながら答えた。「でも精霊様が通訳してくれるニャ!」
笑顔で戻ってきたノコが説明する。
「小さな子たち、私たちに感謝してるニャ。屋敷のクロタマを倒してくれたから。あの怪物がいたせいで森中が緊張してたんだって。これで平和に暮らせるニャ」
マヤは眉をひそめた。
「じゃあなぜ前に襲ってきた?」
ノコが質問を伝えると、菌獣はまた甲高い声で答えた。
「襲うつもりじゃなかったニャ!冒険者が屋敷に近づきすぎないように、ただ眠らせてただけだって」
「そうか……菌獣は人を守ってたんだ」
マヤ、ザラ、俺は罪悪感に顔を曇らせた。何体も倒してしまったことを思い出す。
「心配しないでニャ!誤解だったってわかってるって!」ノコの言葉にほっとする。
「ありがとう……ずっと人を守ってくれて」
菌獣たちは理解したように、俺の周りで輪になって踊り始めた。
「何してるんだ?」
「気に入られたニャ!」
しゃがみ込んでふわふわの体を撫でながら呟く。
「やっぱり可愛いよな……」
ザラが安堵のため息をついた。
「全てうまくいったわね。謎も全部解けたし」
「ねえノコ」急に思い付いて聞いた。「ルミスまで安全な近道を知ってるか聞いてくれるか?」
ノコが質問を伝えると、菌獣たちは嬉しそうに案内を始めた。しばらく歩くと、無事に街の東門に到着。菌獣たちはそれ以上進まなかった。
「道案内ありがとう」笑顔で手を振る。
マヤとザラはまだ俺にしがみつくノコを見た。
「ノコも帰るんじゃない?」
「あ、そうニャ!」ようやく離れるノコ。「楽しかったニャ!特にレン様に会えて!」
マヤは本気の怒りではない唸り声を上げた。
「もういいわ!そろそろ別れよう」
「ああ、もう遅いし」俺も感謝を伝える。「ありがとうノコ。本当に助かった」
「どういたしましてニャ!」しっぽを振りながら。「また会おうニャ!」
マヤは「じゃあな」と小さく呟いた。嫌っていたわけではなさそうだ。ザラも微笑む。
「ありがとう、ノコ」
そうしてノコは森に消え、俺たちはルミスに入った。門番がすぐに気づいた。
「お帰りなさい!さすがSランク、森なんて楽勝でしたか?」
「やあ!」頬を掻きながら。「まあ、いろいろありまして……」
門番に全てを報告した。菌獣と幽霊、ノコ、クロタマ討伐の話をすると、門番は驚愕した。
「菌獣に幽霊に猫娘!?すごい冒険だ!ギルドに報告すれば、きっと褒賞が出ますよ!」
「そうするよ!」
去り際、門番が叫んだ。
「本当にありがとうございました!」
ギルドへ向かう道で、俺たちは森の謎を解決した満足感に浸っていた。
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