拳がまだ熱かった。

ドラゴンはよろめき、信じられないように首を振った。私も同じ気持ちだ。

「……煉？」マヤは傷ついた脇腹を押さえながら、ようやく立ち上がった。彼女の目は驚きに満ちていた。「何だ、今のは……？」

「わからない」私は自分の手を見つめた。

「『戦い方なんて知らない』って、さっきは何だったの？！ 最初からこうして戦えばいいじゃない！」

「本当に知らなかったんだ！ 今までこんなことできるなんて！」

ドラゴンの咆哮が会話を遮った。回復が早く、今やその目には好奇心はない。本気だ。

マヤは構えた。

「後でたっぷり聞くから。今は戦いに集中しろ。準備はいいか？」

「は、はい……（あまり詮索されませんように）」

腰に帯びた剣に視線をやる。ルミスから持ってきた時は使い方もわからなかった。なのに、なぜか抜刀した今、それは単なる金属の塊ではなく、腕の延長のように感じられた。

獣が再び襲いかかる。

今度は体が反応し、楽々と回避した。

マヤは炎の剣で攻撃し、私はなぜか弱点と知っている部位を斬りつけた。

「左だ！」マヤの声。

ドラゴンが回転し、私の剣はその爪にぶつかり、金属音が辺りに響いた。

「いいぞ！」マヤが笑った——戦闘中に笑う彼女なんて想像もしていなかった。「けっこうやるじゃない！」

「かろうじて防いだだけだ。お前の傷は大丈夫か？」

「大したことない！ 死なないように集中しろ！」

◇ ◇ ◇

その頃、ルミスギルドでは……

受付嬢が退屈そうに報告書をめくっていると、伝令がカウンターに近づいた。

「どうも！ ギルド委員会からの書簡です」

「委員会から？ ありがとう」

封を開け、最初の数行で彼女の表情が変わった。

"ギルド委員会の命令により、『氷淵のドラゴン討伐』任務を即時撤廃せよ。新たな記録により、対象は『氷蝕（ひょうしょく）』と判明。本種は極度の危険に分類される。冒険者の安全のため、脅威を再評価するまで任務掲示を禁止する"

受付嬢の顔から血の気が引いた。

「『氷蝕』……？」紙を握りしめ、彼女は呟いた。

近くで酒を飲んでいたドワーフが振り返る。

「おい、あの傷つけるほど強くなる『氷蝕』か？」

受付嬢は答えず、窓の外——氷淵の方角にある遠い山々を見つめた。

「煉……マヤ……」無事でいてくれ。

◇ ◇ ◇

マヤと私は息の合った戦いを繰り広げた。

彼女は炎でドラゴンの翼膜を焼き、私は理解できないほどの精度で脚の腱を斬った。

イライラしたドラゴンは傷ついた翼を広げ、切り裂くような吹雪を起こす。

強風に耐え、吹き飛ばされまいと踏ん張った。

「煉、待て！ 何か企んでる！」

マヤの言う通りだった。何かが迫っている——全身で感じた。

青白い光がドラゴンの喉に集まる。間違いない、必殺の一撃だ。

ドラゴンが頭を傾けた。

「構えろ！ かすっても終わりだ！」マヤが叫ぶ。

「は、はい！」

突然、雷鳴が轟いた。

「プリん！」私は必死で念話を飛ばした。「今の雷、お前か！？」

「違うよ！ 私じゃない！」彼女も混乱している。

そして……

———ザッパー！

稲妻が閃き、まぶしくて目を閉じた。

再び開くと、ドラゴンの首が地面を転がっていた——雷の一撃で断たれたのだ。

攻撃の姿勢のまま、その体は崩れ落ちた。

マヤと私は凍りついた。

「……何……？ 煉、お前か？」彼女が呟く。

「……俺じゃない。何が起きた？」

冷たく澄んだ声が背後から響いた。

「ああ……ここにいたのね」

少女だった。紅の髪と瞳、風に翻る茶色のマント。村で噂のあの子か？

「二人とも、大丈夫？」