カクヨム短歌賞【ナツガタリ'25】

つばきとよたろう

終端の52Hzグッドバイキッチュファッションぼくらは夢幻

想像することのできない大気圏で夢見てる宵の流れ星

纏まりのない気持ちと製氷室の氷天秤にかけてる

空気薄い密室、誰も解くことのできない天井の照明

家に帰るまでが遠足です三百円までひとりプリクラ

ぼくらぜんいんせんせいまでもこころのなかでよびすてにしてるくん


終端の52Hzグッドバイキッチュファッションぼくらは夢幻

遠雷の通せん坊低い屋根人と人が流れ空の道程

最終のバス夜を共にした体今夜の夢を送って

幸せはわたし透明になって初めて感じる色の物語

電卓の伝言ゲーム指のステップいくつゼロを押せばいい


ファミレスのウェーターが放火犯 私きれい鏡を覗いている

ようするにうそってやつはほんとうのほころびさがしつみかさねるの

幼子の成長期の服どこもかしこも地球はゆるゆる

曙光の赤信号ウィンクしているみたいぼくの足止めた

二人乗り漕ぐ膝が眩しくて制服のスカート翻った


共通する壁無限の扉の間に立って憂を吐き出す

声の塊が喘鳴と共に不躾に異邦よりきたる旅人よ

重力の弧の境界に軌跡から現れし新月よ

狭い路地高いビルの窓今日も明かりが灯る永劫回帰に

歩くごと忘れてしまう単語たち誰かに踏まれ靴底のガム


何らかがおかしいように旅に出た時はじくじくと進んでいく

自撮り画面あんなに赤い日が沈むピースをして原爆ドーム

表情のない百人の子供眠り姫の棺を覗いて

見つけたのあで意思疎通できる町 あと残して消えた君

歩くこと忘れてしまった地球人青き星背にし兎飛び


この夢は何かをしないと先に進めない現実の複製

天気いい雨空の下私とは正反対の性質の兄

長い爪掴みにくいスマホ黒板の文字画像認識できない

吠えろ喚け黄昏時の形のない犬ぼくの鼓膜破って

かみつみやのうまやとのとよとみみのみことあだななんていうのだろ


朝帰りの君もう我慢できない限界崖を掴むぼくの腕

衝撃的な結末を見て目を覚ました目を覚ました目をさま

いつか見たゾンビ映画無残に女の人食われて仲間となる

路上に倒れる覗いた顔が自分そっくりで息を止めた

雪の舞う葉月のある日夢みたい起承転結か気象予報士


角の降る町を彷徨えば尖った猫に出会うぼくの名は丸井

影法師精一杯伸びろ遠く早くぼくの一秒先を超え

んで終わっても負けじゃないんだ、だから君のんを使えばいい

あの事件ネタ不謹慎だと炎上せず一件のコメントアリ

人の気持ち独りでいると重過ぎるって私安易なセックスをして


今来たのタイムスリップ過去と未来のぼく気まずい空気そっと吸う

その石鹸化粧も涙も気持ちさえ奇麗になると騙されて

哀しみは三分しても一粒が冷たすぎて傷は癒えない

チューする時に目が閉じなくてテープで貼り付けた目蓋は柔らか

悲しいのは私の中で感情の一粒だねノクティルーカ


冷蔵庫の賞味期限の食物はこの世の最小現実

寝転んで青息吐息ひび割れた唇の縁もう冬の初め

スティーブントレントレインジェイソンスタンベリーヌ犯人は誰

1%《じゅうぶんのぜろ》は許されない数よりましなぼくの1%の夢

目を閉じて十数える消えそうな夢はぼくら私たちの現実

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カクヨム短歌賞【ナツガタリ'25】 つばきとよたろう @tubaki10

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