第5話未来への船


遥かなる水平線を後ろに従えて

一隻の小さな船が浮かんでいる。

名前は「ミライ」とつけた。


14才になった進は、この船を祖父から

譲り受けた。古びた船だが少年にとっては宝だ。


進は船に乗り込むと祖父に教えられた通りに

まだ見ぬ世界へと漕ぎだした。立った今離れた

町は過去に縛られて希望を持たない場所だ。

誰もが明日を語らず、昨日の話ししかしなく

なった世界になってしまった。


少年は海風に吹かれながら明日と言う

在処を探しに行こうとしていた。


「恐れるな、舵はおまえの心にある」

どこからか、風が祖父の声を連れてきた。


波は平坦を嫌うものらしい。航路は

時に嵐に見舞われ、進路の灯しびとなる星を

失った夜もあった。エンジンが止まり、運命を

風に託した日も続いた。それでも進は心腐ること

なく日記に未来を描き続けた。

少年の心を支えたのは祖父から言われた

もう一つの言葉だった。


「海の向こうには、希望がある」

と。


ある朝、薄紅の光が水平線を染めた。すると

向こうに突然新しい島が現れた。島に近づく

につれ、見たことのない空と風の匂いがした。

そして風に運ばれて人々の笑い声が聞こえる。

明日を笑って語る島があった。


進は微笑した。横顔は逞しかった。

冒険は終点ではない。ここからだ。

新しい未来が始まるのだ。


「進!進!着いたよ。」

肩を揺らされて目を開けた。

「ドライブインに着いたよ。食事と

トイレ済ませなさい。」

母親が急かすように言って車から出るように

進に促した。


夢...だったんだ。でも、綺麗な空だったなぁ。

そう呟くと空を見上げた。



※アプリ書く習慣より

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