ハクチウム・吐昼夢

尾谷金治

第1話 薄命

暖かいを少しばかり通り越した、微妙に暑い教室。

五月もそろそろ終わりに差し掛かるなあ。

気怠げにチョークを黒板に擦り付ける先生の方なんか全く見向きもせずに、憎らしく晴れた空をぼんやりと眺めていると、つい眠たくなってしまうのは恐らく全国の学生が共感するだろう。


春と夏のいいとこ取りだか悪いとこ取りだか、なんとも例え難い絶妙な温もりに包まれた僕は、固い机に頬を乗せ、遠退く意識の尻尾も掴もうとはしなかった。そのまま流れるように夢の世界へ吸い込まれていく。

気分は悪くなかった、はずだった。


気がついた時、既に視界の全てを一人占めするのはあり得るはずもない衝撃の景色。


それは、無限の土地。一度も足を運んだことなどないはずなのに、どうにもノスタルジーを感じてしまう。

それは、真っ白な遊園地。動かない陽に照らされるは白と白の観覧車。針のない時計塔。白馬の回る回転木馬は一頭しかいない。

それは、心地よい風、無人の乗り物とレールが軋む音だけが肌に滲みる。

嫌になるほど白い空と、見飽きる程の白い地面の交じる果ては地平線が曖昧な陽炎のように見えた。


不思議な程に息が苦しくなり、張り裂けた胸が足元へ落ちてしまう。理解が追いつくより、もっと、先に。

貼り付いた靴を剥がす思いで歩けど、出口はどこにも見当たらない。太陽が微動だにしないところを見るに時間すらないのかもしれない。

閉じ込められた僕は、ひたすらに焦った。助けを求め叫んでも、反響もなく消えてしまう。

やがて疲れ果てて、決意を決める。

必ず、助かる方法を見つけてやると。

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