第28話 俺 VS 桜井春 ?

 桜井春に正直な気持ちを告白するのは怖い。

 

 でも、俺が打ち明けないと絶対に後悔する。

 桜井が俺のことを信頼しているからこうやって話してくれたのだ。だったら俺もそれに答えるべきではないか?


「青山君、大丈夫? 顔が赤いよ?」


桜井が心配そうに俺を見つめた。俺も彼女を見つめる。


 勇気を出して話すべきだ。

 俺は桜井の目を見た。彼女の瞳が宝石のように輝いているようだった。


「俺も・・・北野さんのことが好きなんだ」


 ついに桜井に打ち明けた。

 

 俺はこれまで北野に支えられてきた。 自分がダメだと思っても彼女だけは違うといってくれた。放っておけない人だと言って俺を見捨てなかった。

 そして彼女の弱さを知って心配して北野を見つめると、彼女が頰を赤らめていた。それが可愛かった。そうして甘えてくるような仕草で俺といてくれたんだ。


 桜井には俺の気持ちを理解してほしい。

 北野とこれまでのことを全部話した。


「そう、だったんだね」


桜井が目を潤ませているようだった。


「どうしよう」


桜井がぽつりと言った。


「どうしようか」


俺も同じように言った。

 桜井は北野のどういうところが好きなんだろう? 気になった。


「桜井さんは北野さんのどんなところが好きなの?」


俺は聞いてみた。彼女は答える。


「青山君と同じかな」


桜井が悲しげに言った。


「そうなんだ・・・。そしたら北野さんは誰とでもそう接するのかなぁ。特別に見せてくれないのかな」


俺が聞いた。

 

「違うと思う。咲は自分に厳しくする子なの。隙を見せたくないから強くあろうとする。私たち以外の同級生にそう見せているわ」


そう答えた後、桜井の顔が俺の方へ向いた。


「だから私、咲から引かないよ」


それに俺は納得した。


「相手が青山君でも正直に言う」


 なんだか風が吹いているような気がした。サアーと流れてくるような冷たい風だ。俺の胸にぶつかってくる。

 

 心臓はそれに抵抗するように熱く燃えているようだった。

 桜井は唇をきゅっとしている。

 俺は桜井とは敵対したくない。仲良くしたい。 けどそれも難しいのかもしれない。

 それでも俺も正直に言う。


「俺も、引かないよ」


桜井の方を向いて言った。


「うん」


 こうして俺と桜井は互いの気持ちを知った。そして二人で北野へ告白するのは禁止と決めた。互いに封じる作戦のようだが、これが一番良いのかもしれない。桜井も納得していた。


「破ったら、ペナルティよ」


「うん、了解」


 俺は桜井と歩いて屋上の扉を開けた。階段を降りる時は薄暗い感じがして寂しい気もした。けど、お互いの気持ちを知って嬉しかったのだと思う。

 

 そして俺は北野の事を心配した。風邪、良くなったかな?  

 メッセージを送ってみた。すると。


『二人三脚が恋しい』


と返事があった。


「ええ? どういうこと?」


冗談のつもりだろうと俺は思ったけど、もしかしたらそばにいて欲しいということかな?


 俺は放課後に彼女の家に行こうと思った。

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