第8話 信用を得るためのシステム
――どういうつもりだ?
俺は思った。
※※※
外は暗くなっていた。
校舎の外にある照明の灯りがぽつろぽつりと明るくしていた。
「……」
北野は何も言わなかった。
北野が黙って俺の目を見た。そして次にはこんなことを言った。
「失望した?」
俺の心の中を透かしているみたいにはっきりと言った。
「いや、俺はそんな反論するほどの立場じゃないから」
俺は動揺していた。彼女が尋問をしてくるのではないかと思ったからだ。
でも、俺は内心言いたかった。意味の無いことを淡々とこなす。そんな作業プレイを想像したからだ。北野は俺の本心を見抜いているようだった。だから失望したか? と聞いてきたのだ。
「そう、じゃあ引き受けてくれるのね?」
北野は目を逸らした。
すごく前向きな話なのに、それが人を突き放すような態度なのだ。
「う、そう言われるとせめて説明してほしいなと思うけど」
俺は挫けずに精一杯の正直な気持ちを彼女に打ち明けた。
すると北野は手を伸ばした。
ペラッ。
紙が曲がる。そんな音がした。
北野がいつのまにか一枚の紙を取り出していた。そして俺に手渡した。
それは特別更生プログラムの計画表だった。びっしりと詰まっているかと思ったが、意外とやることは少ないようだった。
正直、え? これだけ? と思うほどの量だ。北野さん、意外と優しいのかな? 俺はそう思った。
「ここに載っている各ミッションをこなしてもらうの」
彼女が言った。
「このプログラムの目的は、信用を勝ち取ること」
彼女はそう続けた。
――信用? なんか曖昧だな。
俺はそう思った。
「今のあなたはストーカーという汚名があるの。だからそうではないという所を見せるのよ」
――ああ、なるほど。
俺は思った。
各ミッションをこなして人に評価をもらうようなものだ。SNSでいえば、どれだけいいねの数が得られるかということ。
「信用を得たことはどうやって判断するの?」
俺は素直な気持ちを言った。
それに対して北野は冷静だった。
「ミッションをこなした後に評価側からこのアカウントにいいねが送られるわ。それを私たち風紀委員とあなたが確認する」
北野は俺に見えるように画面を見せた。
――なるほど、そんなシステムだったのか。
俺は関心した。
北野は的確な判断を下す。俺は彼女のそういうところを尊敬した。
「わかった。理解したよ」
すると、俺が納得した顔をしたからだろうか? 彼女の表情が緩んだのだ。
俺はそれにドキリとした。北野が初めて見せた表情だった。
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