風紀委員の北野さん
こわき すすむ
第1話 俺の名前は青山大地
――これは、俺が“過ち”から更生して、変わっていくまでの話だ。
えっと、まず自己紹介から。
俺は1年2組の
話を単刀直入に言うと、俺は隣のクラス、1年3組の
何というか、桜井春の瞳が俺を見つめた時、ドキッとしたんだ。そして彼女は微笑みで眉の先が垂れて頬が上がり、口元が緩んだ。それだけで俺の胸はときめいた。
「青山君」と優しく声をかけられ、そして俺が答える。段々会話が続いて、そうして話が弾む。陰キャな俺でも彼女は嫌がる素振りを見せなかった。どんどん彼女を好きになり、彼女がいないと寂しくなった。だから桜井春の優しさは俺にとって希望だった。
でもここでいきなり告白するのはまずい。彼女にせまって勢い任せにするのは嫌われる。
だから万全の準備を整えておく必要があった。
最後は告白だ!
俺は意気込んでいた。
それなのに、その計画は脆くも崩れ去った。
それは6月の梅雨入りをした日、放課後の図書室でのことだった――。
※※※
「青山君。私そういうことする人、ヤバいと思うんだ」
部屋の中央にあるテーブル席から桜井の怯えるような声があった。
対して俺は本棚の影にいた。
隠れている俺に背を向けて、席に座っていた桜井。彼女は唇が震えるような弱々しさだった。
この時、俺の行動はバレていたのだ。
桜井には俺のしていることが分かっていた。
俺は見た。
椅子を後ろに引きずる音がした後、桜井がゆっくりと席を立って目の前に置かれているであろう勉強道具を急いで仕舞いだした。
スクールバックを肩にかけると振り返ることもなく入り口の方へと移動しドアに手をかけ、ガラッという音の後にピシャッという閉まる音がした。
その行動は獣を恐れる小動物のようだった。
……あっけなかった。
告白に失敗した。俺は受け入れられなかったのだ。
――これからどう生きていけばいい?
そんな言葉を心の中でつぶやいた。
それは神様にすがるような思いだった。
俺は顔を上げた。窓に目が移った。
図書室の窓に貼り付いた雨粒が滴り落ちる。その後、俺の頰に冷たい何かが伝わった。涙だった。
(帰ろう。)
そう思ったら俺は図書室を出ていた。
廊下を歩き階段を降りて昇降口に向かっていた。
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