第3話「光と技術の訪問者」

初夏の風が心地よく吹くある日、ハルトの牧場に一台の馬車がやってきた。立派な装飾が施されたその馬車には、ガルドナ領の紋章が刻まれている。


「ん? 誰か来たみたいだよ」


シエルが空から降りてくると同時に、牧場の動物たちもそわそわと落ち着かない様子を見せた。


馬車から現れたのは、青い法衣に身を包んだ若い女性だった。透き通るような銀髪に、澄んだ瞳を持つその女性は、微笑みながらハルトに一礼する。


「初めまして。私は、魔道具技師のライラ=アルヴァロ。領都から派遣されてきました」


「魔道具技師……?」


ライラは丁寧に頷く。


「ええ。あなたが創った魔道具の噂が領都まで届いていて……視察と技術交流のために来ました」


驚くハルトに、彼女は革の鞄を開いて、中から美しい魔法設計図を広げる。


「この設計図、あなたの“自動給水器”を基に改良してみたの。もしよければ、一緒に作りませんか?」


ハルトは目を見張る。図面には、自身が苦心して作った構造が、より洗練された形で描かれていた。


「……ぜひ。お願いします」


こうして、ハルトとライラの技術交流が始まった。牧場に設けた工房には、新しい設計と材料が持ち込まれ、より高度な魔道具の開発が進められていく。


その中には、動物の体調を自動で感知する魔法首輪や、天候に応じて気温調整する畜舎の魔法装置など、夢のような技術が詰まっていた。


村の子供たちも、その様子を目を輝かせて見守っていた。


「将来、僕も魔道具技師になりたい!」


「わたしも! 動物のための魔法、いっぱい作りたい!」


ハルトは笑みを浮かべながら、その光景を眺めた。


「……これが、本当にやりたかったことかもしれない」


魔道具が、命を支える“手段”から、未来をつなぐ“希望”へと変わっていく。その歩みが、確かに始まっていた。

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