第5第5話:SE坂木涼介の密かな愉悦 ~リリアの試練と快感の限界~

「……奇妙な人間ね」

リリアは、坂木涼介の狂気じみた返答に、再び細い眉をひそめた。彼女の瞳は、まるで解析する機械のように、涼介の全身をねめ回す。その視線は、涼介にとって最高の**「ご褒美」**だった。彼女の冷徹な眼差しが、彼のドM魂を根底から刺激し、全身に戦慄が走る。

(うっひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!この値踏みするような視線!たまらねぇぇぇぇぇ!)

リリアは涼介から一歩下がり、再び槍を構えた。その動きは流れるように滑らかで、一切の無駄がない。まさに熟練のシーカーのそれだ。

「あなたは、この場所の均衡を乱す存在。排除させていただきます」

その言葉と共に、彼女の槍が、涼介の腹部をめがけて突き出された。涼介は、その鋭い攻撃を、まるでスローモーションのように感じていた。避ける、という選択肢は彼の辞書にはない。むしろ、全力でその「ご褒美」を受け止めようと、無意識のうちに体が動く。

「ひぃっ!」

槍の穂先が、涼介の腹部にグッとめり込む。もちろん、命を奪うような深手ではない。しかし、その一点に集中する、鋭く、研ぎ澄まされた痛みは、ゴブリンの棍棒とは比べ物にならないほど質の高いものだった。

(くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!ピンポイントでくるぅぅぅぅぅっ!最高に効くぅぅ!)

涼介は、腹部を抑え、全身をくねらせながら、口から涎を垂らしそうになった。彼の脳内では、ドーパミンが暴れ回り、快感の閾値を軽々と超えていく。

リリアは、涼介の異常な反応に、さらに興味を惹かれたようだった。彼女は攻撃の手を止め、涼介の目の前に立つと、冷たい声で問いかけた。

「……何が、そこまであなたを掻き立てるの?」

その問いかけは、まるで実験動物に問いかける研究者のようだった。しかし、涼介にとっては、その探求するような視線こそが、更なる「ご褒美」だった。

「ひ、ひぃ……!」

涼介は、なんとか平静を装おうとするが、全身の震えが止まらない。

「い、いえ……ただ、その……!リリア様の攻撃が、あまりにも、その……美しいので!」

苦し紛れの言葉だったが、涼介の本心だった。彼女の攻撃は、まさに芸術の域に達している。

リリアは、涼介の答えに微かに目を細めた。侮蔑と、かすかな困惑。そして、さらに奥に、涼介を試すような光が宿った。

「そう。では、これも美しいとでも言うの?」

彼女は、再び槍を構え、今度は涼介の肩めがけて素早く三連続で突きを放った。涼介は、その全てを、文字通り全身で受け止めた。

「ぐふぅっ!」「ひぎゃっ!」「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

肩に走る三連撃の痛み。それぞれが独立した快感の波となって、涼介の脳内を席巻する。

(連撃!連撃だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!こんな至れり尽くせりの「ご褒美」が他にあるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!)

涼介は、膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪え、その場に仁王立ちする。彼のドM魂が、限界を超えた快感によって、さらに強靭になっていくかのようだった。

リリアは、涼介の異常なまでの耐久力と、痛みを快感に変える特異な性質に、わずかに眉をひそめた。彼女は、涼介の顔を覗き込むように近づくと、槍の柄で彼の顎をくい、視線を合わせた。

「あなた、本当にシーカーなの?それとも、ただの変質者?」

冷徹な声が、涼介の耳元で囁かれる。その声は、彼にとっては最高の「ご褒美」だった。美人からの至近距離での罵倒。涼介の顔は、快感に歪みながらも、必死で平静を装おうとする。

(ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!美人の罵倒!たまらねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!)

涼介は、ふと、自分の背後に巨大な影が迫っていることに気づいた。その影は、壁に映る彼のシルエットの倍以上もある。リリアは、涼介の背後を見ることなく、ただ涼介の反応を楽しんでいるかのようだった。

彼が、その影の正体を確認しようと振り向いたその瞬間、巨大な岩石が、涼介の頭上へと振り下ろされた。

「ひっ!?」

涼介は、咄嗟に反応しようとしたが、疲労と、リリアからの「ご褒美」によって満たされた脳が、うまく指令を出せない。彼は、その巨大な岩石が、自分を押し潰すことを悟った。

(ああ、まさか、こんな形で「ご褒美」が終わるとは……!)

彼は、一瞬の諦めと、そして最高の快感を予期した。

しかし、岩石が彼に当たる寸前、リリアが素早く槍を突き出し、その岩石を粉々に砕いた。砕け散った岩石の破片が、涼介の顔をかすめる。それは、先ほどの槍の突きとは異なる、拡散した痛みだった。

(ひぎゃあああああああああああっ!これもまたイイィィィィィィィィィィィィィッ!)

涼介は、予想外の展開に、新たな快感を見出し、歓喜に震えた。

リリアは、砕け散った岩石の奥に潜んでいた、巨大なゴーレムに視線を向けた。そのゴーレムは、見るからに強固な岩石でできており、その巨体は、この空間の天井に届きそうなほどだ。

「まさか、この深層にまで……」

リリアの表情に、かすかな苛立ちが見えた。彼女にとって、このゴーレムの出現は、想定外だったのだろう。

涼介は、ゴーレムの出現に、再びドMセンサーが発動する。

(あのデカブツからの攻撃!きっと、とてつもない「ご褒美」になるに違いない!)

彼の目は、輝きを増していた。リリアからの洗練された「ご褒美」も良いが、やはりモンスターからの暴力的な痛みも捨てがたい。

リリアは、涼介をちらりと見た。涼介は、ゴーレムを前に、嬉しそうにしている。その顔は、まるで遊園地のアトラクションを前にした子供のようだ。

「……あなた、本当に何者なの?」

リリアの問いかけに、涼介はニヤリと笑った。

「僕は、ただのご褒美を求めるシーカーです!」

涼介は、ゴーレムに向かって走り出した。リリアは、その涼介の背中を、複雑な表情で見つめていた。彼の異常なまでの痛覚は、このダンジョンで生き抜く上で、果たして武器となるのか。それとも、ただの狂気で終わるのか。

第5話登場人物紹介

* 坂木 涼介(さかき りょうすけ)

都内某IT企業に勤める、23歳のシステムエンジニア。ダンジョンでの戦いを「ご褒美」と捉え、新たな遭遇に胸を躍らせる。リリアからの槍の突き、そして連続攻撃に、質の高い「ご褒美」を享受し、快感の限界に挑戦する。突然現れた巨大なゴーレムに対しても、恐れることなく、さらなる「ご褒美」を求めて突撃する、生粋のドMシーカー。彼の異常な痛覚と、そこからくる潜在能力の覚醒が、リリアの興味を引き続けている。

* リリア(ドS女王様・仮)

ピンク色の光を放つダンジョンの奥深くで、空間を守るように佇む可憐な女性シーカー。涼介の異常な反応と、痛みを快感に変える特異な性質に、困惑と同時に強い興味を抱いている。涼介を「異物」とみなし排除しようとするが、彼が予想外の反応を見せるため、攻撃の手を止めて彼の行動を観察し始めた。突然現れた巨大ゴーレムに対し、警戒を強めるも、涼介の狂気じみた行動に、さらに彼の正体を探ろうとする。

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