* 俺のMは隠せない! ~今日もダンジョンで本能解放~

AI太郎

第1話:SE坂木涼介の密かな愉悦 ~残業帰りの誘惑~

東京の片隅に位置する雑居ビルの一室。システム開発部のオフィスでは、今日も遅くまでキーボードの音が響いていた。23歳のシステムエンジニア、坂木涼介は、ディスプレイに映る無数のコードと格闘していた。彼は、一見するとごく普通の、どこにでもいる会社員だ。地味な眼鏡に、猫背気味の姿勢。だが、その内側には、誰にも言えない究極の秘密を抱えていた。生まれつきのドM体質――それが、彼の日常を非日常へと誘う、隠された鍵だった。

「ふぅ……ようやく一区切りか」

涼介は、大きく伸びをした。時刻は深夜0時を過ぎている。彼の疲労困憊の体は、限界を訴えているかのようだった。しかし、彼の心は、奇妙な高揚感に包まれていた。

(この疲労感……たまらねぇぇぇぇぇ!これが仕事の「ご褒美」ってやつかぁぁぁ!)

彼は、連日の残業で蓄積された疲労すらも、快感に変えてしまう特異な性質を持っていた。彼の脳内では、ドーパミンが静かに、だが確実に分泌されている。

疲れた体に鞭打ち、涼介は会社を出た。深夜のオフィス街は、昼間の喧騒とは打って変わって静まり返っている。しかし、彼の心は、これから訪れるであろう「ご褒美」への期待で、高鳴っていた。

彼の向かう先は、自宅ではない。彼が住む東京都心の住宅街に、ここ数年で突如として現れた、異質な空間――通称「ダンジョン」だ。

「おい、またダンジョンかよ、坂木」

ギルド街に入ると、ギルド「暁の誓い」の常連おじさんシーカー、山田太郎が涼介に声をかけてきた。山田は、いつもギルドの片隅で酒を飲んでおり、ダンジョンに向かう涼介を見るたびに、お節介を焼く。

「はい、ちょっと寄ってみようかと」

涼介は、努めて平静を装って答えた。山田は、涼介の眼鏡越しに見える顔色を見て、にやりと笑った。

「そうかそうか!若い内は、どんどんダンジョンで経験を積むこった!だが、無理はするなよ!」

山田の言葉は、涼介にとっては「ご褒美」だった。彼の無責任な肯定が、涼介のドM魂をさらに刺激する。

(この無責任な応援、最高だぜ!)

ギルドの入口をくぐると、まず目に飛び込んできたのは、受付のカウンターだ。そこには、個性豊かな受付嬢たちが並んでいた。

涼介が最初に声をかけたのは、クールなベテラン受付嬢、綾瀬梓だった。

「Fランクシーカー、坂木涼介です。ダンジョン探索の申請を」

涼介は、事務的に手続きを済ませる。綾瀬は、涼介の顔色をちらりと見たが、特に何も言わず、淡々と書類を処理した。

「はい、坂木様ですね。申請を受け付けました。無理はなさらないでください」

彼女の無関心こそが、涼介にとっては新たな「ご褒美」となる。

(この冷徹な対応、たまらない!まるで透明人間になった気分だ!)

次に、彼の視界に入ったのは、元気いっぱいの新人受付嬢、春日部陽菜だ。彼女は、涼介がダンジョンに向かおうとしていることに気づくと、目をキラキラさせた。

「坂木さん、お帰りなさいです!今日もダンジョンに行かれるんですか!?気を付けてくださいね!」

彼女の純粋な応援は、涼介にとって「過剰な心配という名の拷問」となる。

(ひぃっ!この純粋な心配、効くぅぅぅぅ!)

そして、ギルドの依頼仲介人、鈴木隼人が涼介に近づいてきた。

「おや、坂木さん。今日はどんな依頼をお探しですか?とっておきの『痛い目にあえる』依頼もありますよ?」

鈴木は、涼介のニーズを(誤解したまま)把握し、金儲けに繋げようとする。涼介は、自分の性癖が商売に利用されることに**「金銭に変換されるご褒美」**を感じる。

(金儲けのために利用されるなんて、これもご褒美だ!)

涼介は、彼らの言葉に内心で歓喜しながら、ギルドを後にした。彼の足は、吸い寄せられるように、ダンジョンの入り口へと向かっていた。

ダンジョンの入り口は、巨大な岩でできた門のような形をしており、そこからは不気味な瘴気が立ち上っている。周囲には、ダンジョン攻略の生配信をしているシーカーたちが集まっていた。その中には、ダンジョン配信界のスター、吉田健太の姿もある。彼は、今日も数百万人の視聴者に向けて、ダンジョン攻略の様子を実況していた。

(吉田健太の配信に映り込むのも、ご褒美だなぁ)

涼介は、密かに期待を膨らませた。

彼は、ギルドの新米清掃員、渡辺翔太が床を拭いている脇を通り過ぎ、ダンジョンへと足を踏み入れた。

涼介のダンジョンライフは、こうして、今日も幕を開けるのだった。

第1話登場人物紹介

* 坂木 涼介(さかき りょうすけ)

都内某IT企業に勤める、23歳のシステムエンジニア。地味な外見とは裏腹に、生まれつきのドM体質という究極の秘密を抱えている。ダンジョンでの戦いを「ご褒美」と捉え、痛みを快感に変える特異な性質を持つ。日々の残業すらも「ご褒美」と感じる。ギルドの受付や街の人々の反応に、それぞれ異なる「ご褒美」を見出しては密かに喜んでいる。

* 山田 太郎(やまだ たろう)

ギルド「暁の誓い」の常連Fランクシーカー。50代半ば。冴えない見た目だが、ダンジョン歴は長い。涼介のボロボロの姿を見ては、無責任に「それがシーカーってもんだ!」と肯定し、涼介のドM魂を刺激する。

* 綾瀬 梓(あやせ あずさ)

ギルド「暁の誓い」のベテラン受付嬢。年齢不詳。常に冷静沈着で、涼介の奇行にも動じず、淡々と事務処理を行う。その無関心さが、涼介にとっては「無視されるご褒美」となる。

* 春日部 陽菜(かすかべ ひな)

ギルド「暁の誓い」の新人受付嬢。18歳。明るく元気な性格で、シーカーに憧れている。涼介の怪我を見るたびにパニックになり、純粋な心配をぶつけるため、涼介は「過剰な心配という名の拷問」を感じる。

* 鈴木 隼人(すずき はやと)

ギルドの依頼仲介人。30代。口がうまく、金儲けが第一。涼介の奇妙な依頼選び(「被ダメージが多い依頼」など)に気づき、彼に最適な「ご褒美」依頼を斡旋しようと画策する。涼介は、自分の性癖が商売に利用されることに「金銭に変換されるご褒美」を感じる。

* 吉田 健太(よしだ けんた)

ダンジョン攻略の生配信で絶大な人気を誇るAランクシーカー。20代後半。イケメンで話術も巧み。涼介のダンジョンでの奇行(痛みで叫ぶなど)を偶然配信に拾ってしまい、困惑しつつも、視聴者からは好評を得てしまう。

* 渡辺 翔太(わたなべ しょうた)

ギルドの新米清掃員。10代後半。シーカーに憧れているが、自分には無理だと諦めている。涼介が残していく血痕や泥の跡(彼の「ご褒美」の痕跡)を掃除するたびに、彼の武勇伝(?)に想像を膨らませる。涼介は、彼が自分の「ご褒美」の痕跡を掃除してくれることに、「影の功労者ご褒美」を感じる。

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