第19話 呼び名ひとつで、もっと近く

ある日、学校の帰り道。


佐倉くんがふと笑いながら言った。


「なあ、篠原ってさ、長いからさ、なんかいいあだ名考えない?」


「えっ、あだ名?」


ちょっと照れながらも、私も考え始めた。


* * *


「そうだ、『しの』とかどう?」


「お、いいじゃん。なんか呼びやすいし」


それから、彼は楽しそうに私のあだ名を繰り返した。


「しの、今日さ、元気ない?」


「あ、元気だよ!しの、そっちは?」


気づけば、自然にあだ名で呼び合うようになっていた。


* * *


ある日、彼が突然真剣な顔で言った。


「しの……」


その響きにドキッとして、つい顔が赤くなる。


「な、なに?」


「やっぱり、しのって呼ぶのが一番好きだ」


私の心は、甘くて柔らかい気持ちで満たされた。

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