第3話 それ、独り占めしていい?

次の日の放課後。

昨日と同じように、私はまた窓際の席に残っていた。


ドアが開く音。

振り返らなくても、誰が来たのかわかった。


「……また来たの?」

「うん。約束したし」


佐倉くんは当然みたいな顔して、私の隣に座った。


机に頬杖をついて、こっちをじっと見てくる。


「……なに?」

「今日も、笑ってくれないかなって思って」


「は?」


「おまえの笑ってる顔、マジで好きだから」


ズルい。

その一言で、また心が跳ね上がる。


「……そういうの、簡単に言うもんじゃないよ」

「簡単じゃないよ。俺、今、めちゃくちゃドキドキして言ってるから」


その言葉に、こっちまで息が詰まった。

こんなに近くで、目を見て、まっすぐ言われたら、逃げ場がない。


「ねぇ」

「……なに」


「おまえの笑顔、俺だけに見せてくれたら、嬉しいなって思うの、ダメかな」


——そんなの、ダメなわけないじゃん。


「……それ、独り占めしていい?」って、

真剣な顔で言う佐倉くんが、もうどうしようもなくずるくて、かっこよくて。


私の胸は、もう完全に彼でいっぱいだった。


「……笑うの、たまにしかできないけど」

「その“たまに”を、俺に全部ちょうだい」


心がほどける音がした。

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