第2話 白いエルフ
魔術とは本来、詠唱が必要だ。言葉に魔力を乗せて力を貯め、魔術名を宣言して力を解放するイメージだ。その詠唱を破棄してしまえば、当然その魔術に込められる魔力なんてたかが知れている。
さっきの彼女が放った黒い閃光は、魔術名の宣言すら行ってない。彼女の純粋な魔力が手から溢れ出た、と考えるのが自然だろうか。だとしたら、無詠唱魔術よりも大変なことだ。
魔力には様々な適性がある。火か水か、光か闇か、生か死か…黒い閃光は恐らく闇と死の性質を持った魔力の塊かもしれない。
幸い農夫には見られていないことだし、さっさと終わらせて今日のところは終わりにしよう。
「あ、ありがとうクロエ。助けられてしまったな。」
「…もう!気をつけてよね!」
「おやぁ?闇の魔力を感じ取って見にきてみれば、魔王軍と手を組んだ
「あなたは確か…。」
豊満で背の高い身体、透き通るように白い肌、長い耳、
「お久しぶりです神父様。魔術師試験が近いのでウチの子に受けさせようと街に下りてきましたわ。」
しまった!とヨハンは額に手を当てる
「そこのアナタ…見た感じ魔術師認定を受けていないように感じるのですが、それに黒いエルフですよ、ね?なんでこんなところで神父様といるんですの?」
「ああ、この子は山に捨てられてたところを私が拾ったんです。魔術の件は…何も教えていなかった私の不手際です。大目に見てくださるとありがたいかぎりです。」
「あらあら、神父様ともあろうお方が魔術のコトを教えないとは、ね?それなら、これを機に魔術師試験を受けさせたらどうですか?」
「クロエ、魔術使いたい!ご主人様の役に立たちたい!」
やれやれと頭を抱えるヨハンであった。
ヨハンは知り合いの魔導師のベルトーチカにクロエの魔術適正を教えてもらいに行くことにした。
「あ、お久しぶりっす!神父様!千里眼の魔術で要件はもう把握してるっすよ!」
「ありがとうベルトーチカ。」
「ささ、クロエちゃんこっちに座るっす!」
ベルトーチカはクロエの手を握り、もう片方の手を額に当てる。するとクロエの手が紫に輝きだした。
「んんん…この感じ…闇の魔力と、これは、破壊…死?あーいや…色々混じっててよく分かんないっす…。ただそっち系ならなんでも行けそうな感じがするっす。」
「ベルトーチカにも分からないことがあるんだな。」
「く、ぐうの音も出ない…。極識卿の名が廃る…トホホ。」
「まあでもありがとう。お陰で俺が使う魔術に適性が無いことがわかった。これだと俺じゃないやつに師事してもらう方がいいな。」
「あ、私、闇とか破壊とか負の適性を持った魔術が使える人を知ってるっす!」
ヨハンとクロエはベルトーチカに教えてもらった家へ足を運ぶ。
その家は一際異彩を放っていた。まるで目の前の家が今から自分たちを殺すんじゃないかというプレッシャーに、ヨハンは押しつぶされそうになっていた。
ヨハンがドアの前に立ち、ベルを鳴らそうとしたとき
ドゴシャッ!ドゴシャッ!ドゴシャッ!
力強い馬の蹄の音がしたその刹那、
「貴ィ様ら何奴じゃあああぁー!!!!」
振り返ったときには既に遅く、鋭い飛び蹴りが目の前まで迫っていた。
「おわああああああ!!!!」
「いやー!すまない!まさか神父様だとはな!儂は神様は信じないタイプだが、この街のみんなには世話になっておる!ほんとうにすまないことをした!」
「ははは、別に気にしてませんよ!(痛かったけど)実は、この子に貴方が扱う魔術を教えてもらいたくて来たんです。」
「ふむ、黒いエルフか…それにまだ幼い子だ。本当にいいのか?か弱い女子とて、容赦はせんぞ?」
「クロエ、どうしても魔術を使いたいの!おじさんの魔術が私の魔力と合うんだって!」
「ふむ、いい目をしている…。明日から毎日ここへ来い。貴様に儂の弟子が務まるか見定めさせてもらう。」
「ありがとう!おじさん!」
「クハハハハハハハ!儂をおじさんと呼ぶとは、随分肝が据わっているな!気に入ったぞ黒いエルフの子よ!」
「あ、ごめんなさいおじさま、いやお師匠様!」
「では、あらためて!儂の名はリ・チョウブン、人呼んで【
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